2025年の世界貿易量、前年比2.4%増に上方修正、AI関連製品が牽引、WTO予測
(世界)
調査部国際経済課
2025年10月16日
WTOは10月7日、「世界貿易見通し(10月更新版)」を発表し、2025年の世界の財貿易量(輸出入平均)の伸びを前年比2.4%増と予測した(添付資料表参照)。これは、4月時点(注1)の0.2%減(2025年4月17日記事参照)、8月時点(2025年8月14日記事参照)の0.9%増という予測から大幅に上方修正した。一方、2026年は前年比0.5%増へ下方修正(4月時点2.5%増、8月時点1.8%増)している。
2025年の見通しを上方修正した主因は、米国の関税措置を見据えた前倒し輸入により、追加関税措置による影響が後ろ倒しになることとした。さらに、半導体やサーバー、通信設備などの人工知能(AI)関連製品の貿易増加や、インフレ率の低下、財政支援に下支えされた世界経済の見通しの改善も要因とした。AI関連製品(注2)は2025年上半期の世界の貿易成長を牽引し、金額ベースで前年比20%以上の増加となった。特に米国では半導体輸入が前年同期比36.2%増と急増した。一方、2026年は世界経済の減速と、関税引き上げの全面的な影響が通年で表れることにより、貿易成長が鈍化する見通しと予測している。
地域別見通しでは、2025年と2026年の米国を含む北米の財貿易量はマイナス成長と予測した。2025年は輸出が前年比3.1%減、輸入が4.9%減と停滞するが、前回8月予測の4.2%減、8.3%減からは上方修正となった。北米の見通しが改善した要因として、中国を除いて米国の関税引き上げに対する報復的貿易措置が各国で取られなかったことで、貿易政策の不確実性が低下したこととした。アジアの2025年の財貿易量の予測では、輸出が前年比5.3%増、輸入が5.7%増と、大幅な成長が見込まれるが、2026年はいずれも減速する見通しだ。欧州は両年とも、小幅ながらプラスとなるとしている。
また、サービス貿易の予測も更新し、商業サービスの輸出量は2025年に前年比4.6%増、2026年に4.4%増を見込んでおり、4月時点の予測から小幅に上方修正した。
WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は「各国が関税変更に対しておおむね慎重に対応したことや、AIの成長可能性、新興国を中心とした国際貿易の拡大が2025年の貿易減速を緩和した」と指摘した。また、「2025年の貿易の底堅さは、ルールに基づく多国間貿易体制がもたらす安定性が大きく寄与している。しかし、安易な楽観は許されない」と警鐘を鳴らした。
(注1)2025年4月14日時点の関税措置を前提とした調整予測。
(注2)半導体やプロセッサーから完成品コンピュータ、サーバー、通信機器など約100のAI関連製品。
(馬場安里紗)
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