ASEANデジタル経済枠組み協定が実質妥結、2026年の署名目指す

(ASEAN、マレーシア、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、東ティモール)

ジャカルタ発

2025年10月29日

ASEAN経済共同体(AEC)理事会は10月24日、マレーシア・クアラルンプールで会合を開き、ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)交渉が実質妥結したことを発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同理事会はDEFA交渉委員会(議長国:タイ)に対し、2026年の協定の完全妥結と署名に向けた取り組みを指示した。2023年9月に交渉が開始されたDEFAは、マレーシアがASEAN議長国を務める2025年の優先経済成果物(PED)の1つとされており、これまでに14回の交渉会合が開催されていた(2025年10月16日記事参照)。

共同声明では今回の実質妥結について、「ASEANのデジタルトランスフォーメーション(DX)の道のりで重要な節目」とした。その上で、初のASEAN地域横断のデジタル経済枠組みとして、「DEFAは域内で包摂的なデジタルトランスフォーメーションを加速し、『ポスト・コロナ』の回復に向けた主要戦略として機能する」と強調した。

DEFAには、越境データフローや、電子決済、個人情報保護に関する規定を含み、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の電子的移転可能記録モデル法と整合させることで、「ASEANの既存のデジタル貿易のコミットメントに基づいて構築された将来を見据えた規定を導入した」とした。また、人材の移動(モビリティー)に関する協力、人工知能(AI)などの新興技術に関する協力、競争政策、オンラインの安全性とサイバーセキュリティー、ソースコードなどの新興分野に関する幅広い規定について合意した。

電子商取引のASEAN独自の規定も

クアラルンプールでは、10月26~28日にASEAN首脳会議・関連首脳会議が開催され、25~26日には「ASEANビジネス投資サミット2025」も行われた。サミットで講演したASEAN事務局のサトビンダー・シンASEAN経済共同体(AEC)担当事務次長は、DEFAの実質妥結に触れ、金融サービスに関する規定のほか、電子商取引(電商)に関する規定とその履行監視、デジタル製品の無差別待遇に関する規定が含まれると明らかにした。電商に関する規定については、2026年3月に開催が予定されている第14回WTO閣僚会合(MC14)での電商交渉に関連して、「MC14での議論の結果が見通せない中、ASEANは産業界が求める確実性を提供するための独自のコミットメントを構築する」と強調した。また、デジタル製品の無差別待遇により、「ASEANで商業活動を行う外国企業が(ASEAN域内企業と)平等な待遇を受けることになる」と述べた。

(大滝泰史)

(ASEAN、マレーシア、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、東ティモール)

ビジネス短信 6be5496ae872f15c