万博テーマウィークで水素の未来を実体験

(日本)

調査部国際経済課

2025年10月09日

水素の安全性や実用性、将来性を実感できる「水素パーク‼外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が2025年9月22~25日、大阪・関西万博会場内で開催された。大阪・関西万博は、「未来社会の実験場」というコンセプトを掲げ、来場者と出展者が新技術を体験(太陽光発電、水素に関しては、資源エネルギー庁記事外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)、アイディアを交換できる場が数多く提供されている。「水素パーク‼」は「地球の未来と生物多様性」テーマウィーク外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注1)のプログラムの1つとして、発電や天然ガスの代替などの目的で注目される水素の活用方法を紹介するために開催された。

写真 水素パーク‼の会場(ジェトロ撮影)

水素パーク‼の会場(ジェトロ撮影)

会場内では、住宅、モビリティー、航空宇宙など暮らしや産業における水素活用について、関連製品や技術を持つ企業22社がブースを設けた。参加企業は既に商品化されているものから、開発中のものまで自社の事業を紹介。中でも「一歩先の未来」をイメージできる展示に、商船三井が紹介した開発・実証中の「WIND HUNTER外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ウインドハンター)」が挙げられる。水素やアンモニアは世界的に船舶の燃料としての活用が進められているが、ウインドハンターは水素を「作る」船だ。帆で受けた風力を船の推進力とし、水中のタービンで発電して水の電気分解により水素を製造。水素を運ぶための手段であるメチル・シクロヘキサン(MCH)に変換して船内に貯蔵し、陸地に運搬する。水素に関心を持つ来場者は企業担当者に質問をし、活発な議論が行われていた。

また、このほかにも、万博会場内のNTTパビリオンで、万博開幕期間を通じて水素の製造設備を見ることができる。同パビリオンは、万博で水素をパイプラインで「運ぶ」ことを実践している。パビリオンに併設された太陽光発電で得られた電力を用い、水電解装置で水を電気分解して水素を製造。製造した水素を水素パイプラインでつなぎ、パナソニックグループパビリオンに供給している。パナソニックグループパビリオンでは、同社の水素燃料電池で水素を電気に変え、使用している。

写真 NTTパビリオンの水素製造・発電設備(左)、水素パイプライン(右)(ジェトロ撮影)

NTTパビリオンの水素製造・発電設備(左)、水素パイプライン(右)(ジェトロ撮影)

ドイツやオランダなど欧州では、既存の天然ガスパイプラインを水素パイプラインに転用したり、水素パイプラインを新設したりして、水素を運ぶ大きなインフラプロジェクトが進行中だ(2025年3月28日付地域・分析レポート参照)。しかし、日本では同様のプロジェクトは大規模な実行段階にない。NTTパビリオンの佐藤孝一副館長は、「将来的に、通信ケーブル用途の配管の空きスペースを有効活用して水素パイプラインを敷設するという当社のビジョンの実現に向けた実践となった」と万博での取り組みの意義を説明した(注2)。

(注1)大阪・関西万博のテーマウィークとは、8つのテーマを題する週間が設定され、パビリオンなどにおいて各テーマに基づく体験・対話型中心のイベントが行われるもの。8つのテーマは、同万博のメインテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」とそれを具体的に表現する3つのメッセージである「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」に関係するものとして検討された。

(注2)2025年9月22日取材に基づく。

(板谷幸歩)

(日本)

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