英スターマー首相と企業など125人の代表団がインド訪問
(英国、インド)
ロンドン発
2025年10月17日
英国のキア・スターマー首相は10月8日から2日間、首相就任後初めてインドを公式訪問した(英国政府プレスリリース)。7月に英国とインドとで署名した包括的経済貿易協定(CETA:Comprehensive Economic and Trade Agreement)の締結(2025年7月30日記事参照)に続き、両国企業のビジネス促進を進めるものだ。
9日にはインドのナレンドラ・モディ首相と首脳会談を行い、両国は共同声明を発表した。声明では、貿易・投資関係の強化や技術・イノベーション、防衛・安全保障、気候変動・エネルギー、教育・文化、地域的・多国間協力など、幅広い分野の協力推進が盛り込まれた。両国間の技術安全保障イニシアチブ(TSI)に基づき、インド・英国コネクティビティー・イノベーションセンターや、インド・英国共同人工知能(AI)センター、インド・英国重要鉱物加工・下流工程協力組合の設立が合意された。英国政府によると、CETA発効後には、英国からインドへの年間輸出額は約60%の増加が見込まれる。
今回の訪問には、ロールス・ロイスやブリティッシュ・テレコム、ブリティッシュ・エアウェイズなどの企業や大学関係者など計125人が同行した。インド訪問に先立ち、ブリティッシュ・エアウェイズは10月7日、2026年にニューデリー~ヒースロー間で1日3便目となる直行便を運航すると公表した。マンチェスター空港も、既存のムンバイ直行便に加えて、11月からインディゴ航空によるニューデリー直行便の新設を公表した。ロールス・ロイスは航空、防衛、重要インフラ、エネルギー安全保障などの分野で、両国の雇用創出と持続的な経済成長を目指す方針を示した。
また、CETA発効により、英国のウイスキー業界も恩恵を受ける見通しだ。インドの関税率が現行の150%から75%へ即座に引き下げられ、その後10年間で40%まで引き下げられるためだ。
一方で、スターマー首相はインド訪問前に記者団に対し、インド人労働者や学生向けのビザ規制を緩和する予定はないと発言した(10月8日付BBC)。移民流入が急増する中、労働党政権は定住資格を厳格化する方針を打ち出しており、こうした移民政策の変更は行わないと強調した。
(植松麗良)
(英国、インド)
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