カメルーン大統領選、ビヤ氏が8期目続投へ、各地で抗議デモ発生

(カメルーン)

アビジャン発

2025年10月31日

カメルーン憲法評議会は10月27日、大統領選挙(10月12日実施)の公式結果として、現職のポール・ビヤ大統領(92歳)が得票率53.66%で勝利し、8期目の続投を決めたと発表した。野党候補イッサ・チロマ・バカリ氏は35.19%にとどまり、結果について「憲法評議会はビヤ大統領に虚偽の勝利を与えた」と批判し、受け入れない姿勢を示している。今回の選挙でビヤ氏は、1982年の初就任以来、約43年間にわたり政権を維持した記録をさらに更新した。任期は7年で、任期満了時には100歳に近い年齢となる(2025年10月22日記事参照)。

2008年の憲法改正により、大統領の再選回数制限が撤廃され、連続当選が可能となった。カメルーンの人口の年齢中央値は約19歳であることから、高齢のビヤ大統領と国民の年齢層に大きな乖離がある。

フランスのアフリカ政治経済誌ジュヌ・アフリック(Jeune Afrique)によれば、選挙結果の発表後、最大都市ドゥアラをはじめ、ドシャン、ンゴン、ギデール、ガルアなど各地で抗議デモが発生(2025年10月29日付報道)。商店や公共施設の破壊、略奪が起きており、治安部隊との衝突で少なくとも4人が死亡した。政府は「違法なデモによる人命の損失と財産の破壊」を認めつつ、バカリ氏にもその責任があると非難し、司法の場で責任を問う姿勢を示した。

国際社会にも非難の声がある。アフリカ連合(AU)はビヤ氏の再選に祝意を示しつつも、「暴力、弾圧、逮捕の報告に深く懸念している」と表明した。また、フランスの報道機関アフリカ・インテリジェンスによれば、27日の結果発表式典にはEU加盟国の大使(スペイン、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランス)やカナダ、英国、スイスの代表が欠席した。人権侵害の調査・報告を行う国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、カメルーン政府による市民弾圧を「過剰な武力行使」として非難している。

カメルーン国内では、英語圏地域での分離独立運動や北部での過激派活動など、治安問題も深刻化している。2017年以降、政府軍と英語圏独立を目指す武装勢力との間で内戦状態が続いており、紛争地域では教育や医療へのアクセスに深刻な制約が生じているとされる。ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、国内避難民は63万人以上、人道支援を必要とする人は170万人以上に達している。

(安藤佳耶)

(カメルーン)

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