ルコルニュ首相、就任から1カ月足らずで辞任

(フランス)

パリ発

2025年10月07日

フランスのセバスチャン・ルコルニュ首相は10月6日、エマニュエル・マクロン大統領に辞表を提出し、受理された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。国民議会(下院)での内閣信任案の否決を受けて辞職したフランソワ・バイルー前首相の後任として、9月9日に首相に任命されたルコルニュ氏は、わずか1カ月足らずで政権を去ることとなり、1958年に成立した第5共和政史上最も短命な首相となった(2025年9月11日記事参照)。

ルコルニュ首相は前日の5日、バイルー前内閣からの再任者が多数を占める新内閣の人事を発表したばかりだった。ルコルニュ氏は6日、首相府での声明で「首相としての職務を果たすための条件はもはや整っていない」と述べ、辞任の背景に3つの理由があると説明した。第1に、政府が10月3日に憲法第49条第3項(政府が議会の採決を経ずに法案を成立させることができる憲法条項)の使用を断念したことに対し、政界がその意義を十分に受け止めなかった点を指摘し、「議会制民主主義への敬意を示す象徴的な決断だったが、衝撃をもたらすことはできなかった」と述べた。

第2に、政党間の協議が機能せず、各党があたかも絶対多数を持っているかのように振る舞い、妥協を拒んだことを批判した。第3には、連立を巡る党派的な駆け引きが2027年に予定される大統領選挙と結びついていたことを問題視し、政治的欲望が政権運営を妨げたとした。

今回の辞任劇に対し、野党各党は一斉に反応を示した。下院第1党の極右「国民連合(RN)」のジョルダン・バルデラ党首は「安定を取り戻すには、下院の解散と総選挙が不可欠だ」と述べ、早期の解散・総選挙の実施を求めた。極左「不服従のフランス(LFI)」を率いるジャン=リュック・メランション氏は6日、党本部での記者会見で「政治的混乱の元凶はマクロン大統領だ」と糾弾し、既に9月に下院に提出済みの大統領罷免の是非を問う動議の即時審議を要求した。

一方、右派「共和党(LR)」党首で、ルコルニュ内閣で内相を留任したブリュノ・ルタイヨ氏は6日、民放テレビTF1のインタビューに応じ、「行き詰まりが続くなら、選挙に戻るしかない」と述べつつ、「第5共和政の要は大統領であり、彼が決断すべきだ」とし、マクロン大統領に対し、新たな首相の任命か、下院の解散か、早急な決断を迫った。

(山崎あき)

(フランス)

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