マクロン大統領、ルコルニュ氏を新首相に任命

(フランス)

パリ発

2025年09月11日

エマニュエル・マクロン大統領は9月9日、セバスチャン・ルコルニュ氏(39歳)を新たな首相に任命した。これは、前日に国民議会で信任案が否決され、フランソワ・バイルー前首相が辞任したことを受けたもの。

ルコルニュ氏は、大統領の支持政党「ルネッサンス」に所属し、マクロン政権では軍事相などを歴任。マクロン大統領の側近としても知られており、2023年には防衛費の大幅な増額を含む軍事予算案を議会で成立させた実績を持つ。分裂した議会内で合意形成を実現したその手腕が評価されている。

マクロン大統領は、2026年度予算案など重要政策の合意形成に向けて、ルコルニュ首相に各政党との協議を指示。協議の結果を踏まえ、ルコルニュ氏は新内閣の人事を大統領に提案する見通しだ。

大統領はまた、首相の行動指針として「国家の独立と強さの維持」「国民への奉仕」「政治・制度面での安定」を掲げ、分裂状態にある議会においても、各政党の信念を尊重しながら、重要政策の合意形成は可能であるとの認識を示した。

ルコルニュ氏の首相任命をめぐっては、野党各党から反発の声が上がっている。下院第1党である極右「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン氏は9日、自身のX(旧Twitter)で「マクロン大統領は“マクロン主義”の最後の一手を打った。彼は少数の側近に囲まれ、外の世界から閉ざされた状態にある」と批判。「総選挙は不可避で、その暁にはRN党首のジョルダン・バルデラが首相になるだろう」と述べ、政権交代の可能性を示唆した。

また、穏健左派の「社会党」も、ルコルニュ氏の首相任命に関する声明を発表し、「マクロン大統領が進める政治路線には一切関与しない」と明言。新政権への参加を正式に拒否した。さらに、同党のオリビエ・フォール書記長は10日、「政府の対応次第では不信任案を提出し、議会の解散に向かう可能性がある」と述べ、政権への対抗姿勢を鮮明にした。

(山崎あき)

(フランス)

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