米主要港、8月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比2.9%減、関税により輸入量減少加速の見通し
(米国)
ニューヨーク発
2025年10月14日
全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」(10月8日)によると、2025年8月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は、前月比2.9%減、前年同月比0.1%増の232万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。
小売業者は、8月の国・地域に対する相互関税発動(2025年8月4日記事参照)の影響を回避するため輸入の前倒しを進めたことから、7月には駆け込みによる輸入量がピークに達したが、2025年末にかけて貨物量は着実に減少すると見込まれている。今後の見通しでは、9月は前年同月比6.8%減の212万TEU、10月は同12.3%減の197万TEU、11月は19.2%減の175万TEUと見込まれている。また、12月は19.4%減の172万TEUと大幅に減少し、2023年3月以来の低水準になる見通し。ただし、関税の影響による総量の減少に加え、前年比での減少率は、2025年のピークシーズンが早期に訪れたことや、2024年後半の輸入が米東海岸とメキシコ海岸の港湾スト(2024年10月7日記事参照)の懸念により増加していたことも影響している。2025年通年での輸入量は前年比で2.9%減少すると予想されている。
ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏は「米国の関税政策の不安定さの継続は、経済に大きな不確実性をもたらしており、今後4~6カ月間の貿易量は予測不可能な変動を見せる見込みだ。多くの大企業は在庫を積み増すため先手を打って輸入を行ったが、それらの備蓄が枯渇するにつれ、関税によるインフレの影響が全面的に明らかになるだろう」と述べた。
米国内で最大の貨物取扱量を誇る西部カリフォルニア州ロサンゼルス港のエグゼクティブディレクターのジーン・セロカ氏によると、米国の小売業者は、トランプ政権の関税政策の進展に伴うコスト抑制のため、2025年はホリデーシーズンの商品の輸入を少なくとも 1カ月前倒しで完了したという。同港では小売業者向け貨物が全貨物量の約半分を占めており、7月には、港湾労働者が101万9,837TEUの輸入量を処理し、117年の歴史で月間貨物取扱量が過去最高を記録した。同州ロングビーチ港のマリオ・コルデロ最高経営責任者(CEO)は「貿易政策の変動が企業と消費者に不確実性を生み続けている」とし、セロカ氏も「これが雇用増加の鈍化と持続的なインフレの一因となっており、輸入業者と消費者がより慎重になっている」と述べ、個人消費を巡る先行き不透明感の高まりを指摘した。
(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。
(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。
(樫葉さくら)
(米国)
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