COP30に向け「気候野心サミット」開催、NDCの提出期限延長で締約国へのNDC提出を呼びかけ
(ブラジル)
調査部米州課
2025年04月24日
国連のアントニオ・グテーレス事務総長とブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は4月23日、オンラインで「気候野心サミット(Climate Ambition Summit)」を主催した。同サミットは、2025年11月にブラジル北部パラ州の州都ベレン市で開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に向け、気候変動対策についてより野心的で新しい約束、具体的な計画を提示する目的がある。会合には、EUなどの先進国や、米州諸国、ASEAN、カリブ共同体(CARICOM)、小島嶼(しょ)国連合(AOSIS)、アフリカ連合(AU)などの代表が出席した。
サミットでの主要議題の1つは、パリ協定締約国による温室効果ガス(GHG)排出削減目標(NDC、注)の早期提出についてだった。パリ協定の締約各国は、2035年までのGHG削減目標を設定し5年ごとに国連に報告しなければならない。直近では、各締約国はNDCを2025年2月10日までに国連へ提出しなければならなかったが、現時点で締約国196カ国のうち1割ほどの国からしか提出されていない。こうした状況を受けサミットでは、提出期限を当初の2月から9月に延長することで合意した。ブラジルの首都ブラジリアからオンラインで参加したルーラ大統領は「われわれは約束を果たすべきだ。全ての締約国は新たなNDCを提出しなければならない」と述べ、あらためてNDCを提出する重要性と必要性を強調した。サミットにオンラインで参加したブラジルのマウロ・ビエイラ外相は、「ブラジルはNDCを最も早期に提出した国の1つだ。この度のサミット開催が他国のNDC提出を後押しすることを願う」と、COP30の議長国として、引き続き締約国を牽引する役割を果たしていくことを強調した。
サミットではほかに、再エネに関する途上国への融資の重要性についても協議された。2023年にドバイで開催されたCOP28では、COPとして初めて「化石燃料からの移行」で最終合意し、「この10年間で行動を加速させる」ことを約束した(2024年2月5日地域・分析レポート参照)。ただ、途上国における再エネ普及率はまだ低く、サミットでグテーレス事務総長は、途上国が再エネに移行するにあたっての資金調達の難しさを強調し、先進国からのさらなる融資の必要性を訴えた。
ルーラ大統領は、COP30開催に向け、ブラジルが議長国として果たす4つの主要イニシアチブを紹介した。
- ブラジル政府が国連と協力し、若者、宗教指導者、先住民、化学者などと共に気候変動への評価を行う。
- 国連食糧農業機関(FAO)と協力し、社会政策と食糧システムの変革をNDCに含めるためのガイドを作成する。
- ユネスコと協力し、気候変動に関する科学的な評価を再度検証する。
- 森林保護を目的とした途上国向けの基金「レインフォレスト・フォーエバー基金(Rainforests Forever Fund)」を、COP30で立ち上げる。
(注)NDCは、Nationally Determined Contributionの略。
(辻本希世)
(ブラジル)
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