大阪で経済安保セミナーを開催、技術流出対策や中国の輸出管理を解説
(日本、中国)
大阪本部ビジネス情報課
2025年10月27日
ジェトロ大阪本部ビジネス情報課は10月23日、近畿経済産業局との共催で、セミナー「トランプ2.0で激化する米中摩擦―新たなグローバル経済安全保障リスク―」を開催した。セミナーには府内外の企業関係者40人以上が参加した。
セミナー前半では、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の鈴木潤弁護士と中川裕茂弁護士が、経済安全保障をめぐる国際動向と必要な企業の対応について講演した。鈴木氏は「経済安全保障リスクは国家だけでなく企業にも損害を与える可能性があり、対応の主な主体は企業」と強調した上で、直近の主な日本の輸出管理制度改正の内容を紹介した。官民対話スキームの構築(注1)、リスト規制対象品目の追加(注2)に加えて、通常兵器キャッチオール規制への客観要件の導入は、中国を含む一般国へ特定品目を輸出している企業にとって影響が大きいとした。中川氏は、米国トランプ政権の動きに呼応するように、2025年以降強化されている中国の輸出管理制度について解説。特に両用品目の再輸出規制(注3)は、日本国内での事業にも影響があるため注意が必要だとした。
セミナー後半では、経済産業省技術調査・流出対策室の清水太一室長補佐が、日本企業の技術流出への対応について講演した。まずは、企業などが有する先端技術が標的になり得る状況であると説明し、自社が優位性を持つ「コア技術」を特定することが重要だとした上で、「民間ベストプラクティス集
」や「技術流出対策ガイダンス
」などの情報提供のほか、技術情報管理認証制度(注4)など、経済産業省の支援策を紹介した。大阪府警察本部外事課の谷川洋樹課長補佐は、実際に技術流出が発生した事例として、SNSでの接触や共同研究の申し入れがきっかけになったケースを取り上げ、参加企業に対策の必要性を呼びかけた。
技術流出対策について解説する経済産業省清水室長補佐(ジェトロ撮影)
質疑応答では、10月9日に発表された中国のレアアース輸出管理の規制強化(2025年10月14日記事参照)に関する質問も多く寄せられ、関心の高さがうかがえた。
(注1)安全保障上の観点から管理を強化すべき重要技術の移転に際して、外為法に基づく事前報告制度を設け、これを端緒として官民が情報共有を行い、技術管理の方策を検討・対話する制度。詳しくは経済産業省のウェブサイト
を参照。
(注2)2025年5月28日に施行された。詳しくは経済産業省のウェブサイト
を参照。
(注3)(1)中国を原産とする特定の両用(デュアルユース)品目、(2)中国を原産とする特定の両用品目を含有、統合または混合して国外で製造された両用品目、(3)中国を原産とする特定の技術などの両用品目を使用して国外で製造された両用品目について、中国外からさらに別の国・地域、組織や個人へ提供・移転する行為に対する規制。中国政府による要求があった場合(品目)に適用される。
(注4)企業の情報セキュリティー対策を、国の認定を受けた認証機関が国の策定した基準に基づいて審査・認証する制度。詳しくは経済産業省のウェブサイト
を参照。
(上野由加里、加藤遥平)
(日本、中国)
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