大きく変わる欧州の入国手続き、10月12日から出入国管理のデジタル化が運用開始
(EU、スイス、ノルウェー、アイスランド、EFTA)
ブリュッセル発
2025年10月08日
シェンゲン圏(注1)の出入国管理を電子化する出入域システム(EES、Entry/Exit System)は、10月12日から段階的に運用が開始される(欧州委員会特設ウェブページ)。渡航前の事前準備は不要であるものの、シェンゲン協定参加国到着時の入国手続きの変更に伴い、入国手続きに要する時間が増えることなどが予想されるため、出張など渡航の際には注意が必要だ。
EESは、パスポートの出入国スタンプをベースに行っていた、これまでのシェンゲン圏の短期滞在時の出入国管理を電子化するものだ。日本国籍者を含む非シェンゲン協定参加国かつ非EU加盟国の国籍者(注2)がシェンゲン圏に短期滞在する際に対象となる。
対象者は、EESの導入後に初めてシェンゲン圏外からシェンゲン協定参加国の入国地点(空港、港湾施設、国境検問所など)に到着した際、入国審査を受ける前にEESへの個人情報の登録が必要となる。登録された個人情報は原則3年間保管され、期間中に圏外からいずれかの参加国に再度入国する場合、新たな登録手続きなしに入国審査を受けることができる。
登録手続きにはキオスク端末とタブレット端末を利用する方法があり、どちらを利用するかは入国地点により異なる。キオスク端末を利用する登録手続きは次のとおり。
- キオスク端末に渡航者情報および渡航に関する情報を入力する。
- 端末にパスポートの顔写真のページを読み込ませる。
- 端末を利用し、顔写真の撮影と指紋の登録を行う。
個人情報の登録完了後は、入国審査官などによる通常の入国審査を受ける。EESの完全導入までは、EESを利用する場合であっても、引き続きパスポートに入国スタンプの押印を受ける必要がある。
10月12日時点で導入する空港はごく一部にとどまる見込み
EESの運用は、10月12日からシェンゲン協定参加国の一部の出入国地点で開始され、2026年4月10月までにすべての出入国地点で導入される見込み。これは参加国での準備不足により、運用開始が複数回にわたり延期されてきたことを受けた措置だ(2025年8月13日記事参照)。EESを導入する出入国地点は段階的に増えるものの、10月12日時点で導入する出入国地点は限定的になるとみられる。EESが導入されていない入国地点から入国する場合、10月12日以降も導入までは入国手続きに変更はない。
(注1)シェンゲン協定参加国は、キプロス、アイルランドを除くEU加盟国に、EFTA加盟国(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)を加えた29カ国。
(注2)参加国の滞在許可証あるいは長期滞在ビザを保持している者は対象外。
(吉沼啓介)
(EU、スイス、ノルウェー、アイスランド、EFTA)
ビジネス短信 4bba0f1d094a13d2