欧州委、EUの出入国管理のデジタル化の段階的運用を10月から開始
(EU、EFTA、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)
ブリュッセル発
2025年08月13日
欧州委員会は7月30日、EUの出入域システム(EES、Entry/Exit System)の段階的な運用開始日を10月12日に設定したと発表した(プレスリリース)。EESは、非EU国籍者のシェンゲン圏(注1)での短期滞在時の出入国記録を電子管理に変更し、出入国管理を強化するもの。全参加国で一斉に開始する方針だったが、参加国の準備不足を理由にこれまでに複数回、運用開始が延期されてきた(2024年10月15日記事参照)。こうした状況を踏まえ、欧州委は2024年12月4日、段階的な開始を提案し、2025年5月19日にEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で暫定的な政治合意に達していた。指紋や顔画像などの生体認証データや渡航関連情報を収集し、現在の出入国スタンプ管理から高度な技術システムに切り替え、不法滞在や身分証の偽造などを体系的に検出するとともに、円滑で安全な移動を可能とする狙い。
段階的運用開始とは、10月12日から180日間の期間を指す。参加国は、欧州委とeu-LISA(注2)と協議の上、EESの段階的運用開始に向けた国家展開計画を策定し、9月24日までに欧州委に提出する。参加国は段階的運用開始日から、1カ所以上の国境通過地点において、可能な限り空路・陸路・海路の国境通過地点を組み合わせ、EESの使用を開始し、データを記録・保存しなければならない。段階的運用開始から30日以内には、当該国における推定国境通過件数の少なくとも10%をEESに登録しなければならない。なお、最初の60日間は、生体認証データの取得なしに運用ができる。90日以内には、国境通過地点の半数において生体認証データを用い、推定国境通過件数の少なくとも35%をEESに登録しなければならない。150日以内には、全地点で生体認証データを用い、件数の50%以上を、170日以内には全件をEESに登録しなければならない。
欧州委は、段階的開始日が近づくにつれ、EU域内の空港を含む国境通過地点などで告知が開始され、渡航者は必要情報を得ることができるという。
(注1)シェンゲン協定参加国は、キプロス、アイルランドを除くEU加盟国に、EFTA加盟国(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)を加えた29カ国。
(注2)European Union Agency for the Operational Management of Large-Scale IT Systems in the Area of Freedom, Security and Justice
(薮中愛子)
(EU、EFTA、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)
ビジネス短信 8ac3769691b1b66a