可搬型小型原子炉開発のラディアント、2億8,000万ドルを投じ米テネシー州への工場建設を発表

(米国)

アトランタ発

2025年10月20日

米国テネシー州のビル・リー知事(共和党)は10月13日、可搬型小型原子炉(マイクロ炉)を開発するラディアント・インダストリーズ(本社:カリフォルニア州)が2億8,000万ドルを投じて、同州オークリッジに同社初の工場を建設すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。

スペースXの元エンジニアのダグ・ベルナウアー氏が2020年に設立したラディアントは、1メガワット(MW)を出力する可搬型のマイクロ炉「カレイドス」を開発しており、2026年までに開発用原子炉の試験をアイダホ国立研究所で開始する予定だ。同社のマイクロ炉は、へき地への電力供給や、病院や災害救援現場における救命活動向けのバックアップ電源としての利用を想定するほか、2025年7月には、米軍基地向けに量産型原子力マイクロ炉を供給する契約を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同社は2025年5月、1億6,500万ドルのシリーズC資金調達ラウンドを完了したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。調達した資金は、同社のカレイドス開発用原子炉の完成、ならびに年間最大50基のマイクロ炉を生産する予定の施設のための工場用地選定と初期建設作業に充てるとされていたが、具体的な工場用地は明らかにされていなかった。同社新工場は、2026年初めに建設が開始され、2028年までに最初の量産型のカレイドス原子力発電装置を納入し、数年以内に年間50基を生産する予定だ。

同社の最高経営責任者(CEO)兼創業者のベルナウアー氏は、「2028年までに工場生産型原子力発電装置の初号機を完成させ、数年後には原子力発電装置を年間12基以上生産できる体制を確立する」と述べた。同社最高執行責任者(COO)のトーリ・シバナンダン氏は、テネシー州オークリッジを選定した理由として、優秀な労働力、地域社会の豊かな原子力関連の遺産、原子力に対する住民の理解度に加えて、同州のビジネスに優しい環境を挙げ、迅速に事業を開始し、稼働させるために必要な規制上の確実性を即座に得ることができたと述べた。

テネシー州は、原子力基金(注2)を活用した原子力関連企業の誘致や教育・訓練プログラムの提供などにより、州の原子力開発・製造エコシステムの拡大を目指しており、同基金を活用して同州に進出した企業はラディアントで6社目(注3)となる(2024年9月10日記事2024年11月27日記事2025年8月22日記事2025年9月9日記事参照)。今回選定されたオークリッジには、原子力関連産業が集積しているほか、米国エネルギー省管轄のオークリッジ国立研究所があり、原子力関連の研究も盛んだ(2024年11月26日記事参照、注4)。

(注1)本投資に関する同社の発表はこちら外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから参照可能。

(注2)5,000万ドルが2023~2024会計年度予算で州議会から承認され、2024~2025会計年度予算では2,000万ドルが追加配分されている。

(注3)これまで同基金を活用し同州への投資を発表したのは、ステラレータ型核融合技術を開発するタイプ・ワン・エナジー、フランスの原子力燃料大手オラノ、遠心分離機などを製造するBWXテクノロジーズ、原子力産業向け高精度加工やエンジニアリングサービスなどを提供するマスター・マシーン、先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロの5社。

(注4)オークリッジには、1942年に開始された国家軍事プロジェクト「マンハッタン計画」の3つのオリジナルサイトの1つとして、ウラン濃縮施設が立地していた。

(檀野浩規)

(米国)

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