米グーグル、テネシー州に建設予定の小型モジュール原子炉からの電力購入計画を発表

(米国)

アトランタ発

2025年08月22日

米国グーグルは8月18日、次世代原子力発電のカイロス・パワー(本社:カリフォルニア州)およびテネシー川流域開発公社(TVA)と提携し、テネシー州で建設中の小型モジュール原子炉(SMR)で発電した電力を同社データセンターで活用すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

グーグルは2024年10月、カイロス・パワーが開発・設置するSMRからの電力を購入する計画を発表したものの、SMRの具体的な設置場所などは明らかにされていなかった(2024年10月17日記事参照)。今回の発表によると、カイロス・パワーがTVAと電力購入契約(PPA)を締結し、テネシー州東部オークリッジに建設予定のSMR「ハーミス2」からグーグルのテネシー州とアラバマ州のデータセンター向けに、TVAの送電網を活用して1基あたり最大50メガワット(MW)の電力を供給する予定で、2030年に稼働を見込む。

カイロス・パワーは、第4世代原子炉(注1)である溶融塩原子炉(MSR)の一種、非水冷却型のフッ化物塩冷却高温原子炉(KP-FHR)の商業化に特化している。2023年12月に、先進的原子炉プロジェクトとしては米国で初めて、低出力実証炉「ハーミス」の建設許可を米原子力規制委員会(NRC)より取得し、2024年7月にオークリッジのイースト・テネシー・テクノロジー・パークで建設工事を開始した。米国で非水冷却型原子炉建設の承認は50年以上ぶりとなる。「ハーミス2」は「ハーミス」に併設され、より小規模でのプラント実証を行うとともに、研究、開発、安全性評価を主目的とした「ハーミス」とは異なり、商業化に向けた発電を行う予定で、2024年11月に米国で初めて、発電用第4世代原子炉としての建設許可を取得した。

「ハーミス2」が建設される予定のテネシー州は、5,000万ドルの原子力基金を活用した原子力関連企業の誘致や教育・訓練プログラムの提供などにより、州の原子力開発・製造エコシステムの拡大を目指している(2024年9月10日記事2024年11月27日記事参照、注2)。「ハーミス」および「ハーミス2」が建設されるオークリッジには、原子力関連産業が集積しているほか、DOE管轄のオークリッジ国立研究所があり、原子力関連の研究も盛んだ(2024年11月26日記事参照、注3)。

(注1)第4世代原子炉は、初期のプロトタイプ原子炉(第1世代)、現行の軽水炉など(第2世代)、現在導入が開始されている改良型軽水炉など(第3世代)に続く次世代の原子炉。より安全で効率的、かつ持続可能となるように設計され、他のエネルギー源に対して十分な優位性を持つ。2030年ごろの商業導入を目指し開発が進められている。

(注2)フロリダ州公益事業委員会が取りまとめた報告書「先進的原子力発電フィージビリティ・レポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によると、全米で8州(バージニア州、テネシー州、インディアナ州、イリノイ州、テキサス州、ワイオミング州、アイダホ州、アラスカ州)がSMR推進政策と優遇措置を導入している。このうち、原子力産業向けファンド(補助金)を設定しているのは、テネシー州(5,000万ドル)とバージニア州(1,000万ドル)の2州のみ。

(注3)オークリッジには、1942年に開始された国家軍事プロジェクトの「マンハッタン計画」における3つのオリジナルサイトの1つとしてウラン濃縮施設が立地していた。

(横山華子)

(米国)

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