清酒の地理的表示(GI)、京都、鳥取、福岡が新たに登録

(日本、メキシコ、チリ、ペルー、EU、英国、米国、世界)

農林水産食品部市場開拓課

2025年10月14日

日本の国税庁は、2025年10月1日付で「京都」「鳥取」「福岡」を清酒区分において、酒類の地理的表示(GI:Geographical Indication)登録産品情報として公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2025年では、6月20日付の「青森」に続いて4件目だ。国税庁長官が指定した酒類のGIは累計で31件となり、徐々にではあるが増加傾向(2023年3件、2024年4件)にある(注1)。

国税庁は、日本酒全体のブランド価値向上やクールジャパンの一環として取り組んでいる輸出促進のため、国レベルのGIとして2015年12月25日付でGI「日本酒」を指定した(注2)。これにより、原料米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒のみが、「日本酒」を独占的に名乗ることができるようになった。

最近の流れとして、2023 年には「信濃大町」「岩手」「静岡」、2024年には「南会津」「伊丹」「喜多方」、2025年には「青森」「京都」「鳥取」「福岡」が新たに登録されるなど、各地域での酒類のGI登録が増えてきている。

そもそもGIとは、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価などの特性を有する産品の名称で、生産地や特性、原料、生産方法などの基準とともに登録し、保護するものだ。登録できる知的財産の1つで、商標(トレードマーク)である地域団体商標とは異なる(注3)。

GI登録することにより、生産地にとっては地域ブランドの確立による「他の製品との差別化」、消費者にとっては一定の品質の確保されていることによる「信頼性の向上」「商品価値の認識」が期待できる。近年増加するインバウンド観光客向けには、GIマークが真正な日本産品であることを証明するものとして、さらなる認知度向上と普及に向けた取り組みが重要となる。また、日本酒の海外展開においても、輸出産品へのGIマークの添付を推進し、日本産品の消費拡大につなげたい。

なお、日本とメキシコ、チリ、ペルー、EU、英国、米国との間では、GI登録された酒類を含む産品が相互保護されている。これまでに保護の対象となった酒類のGIは、国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのウェブサイトで確認ができる。

また、日本酒の場合、インドにおいて、2024年4月1日付でGI「NIHONSHU/JAPANESE SAKE」が登録されたことにより、分析証明書の代わりにGI登録証明書を添付することで通関が可能となった(2024年6月5日記事参照および日本酒のインド輸出に係るルール変更、手続きについて参照)。GIの対外的な成果といえよう。

(注1)酒類の地理的表示については、「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」第86条の6に基づく「酒類の地理的表示に関する表示基準」により、国税庁長官により指定される。WTOの発足に際し、ぶどう酒と蒸留酒の地理的表示の保護が加盟国の義務とされたことから、国税庁が「地理的表示に関する表示基準」を1994年に制定し、国内外の地理的表示について適正化を図っており、2015年の見直しによりすべての酒類が制度の対象となった。

(注2)GIに関して、特定農林水産物など(酒類などを除く、農林水産物や飲食料品、一部非食用農林水産物)が農林水産省、酒類が国税庁の管轄。

(注3)地域団体商標は、地域ブランドとして用いられることが多い地域の名称や商品(サービス)の名称などからなる文字商標。登録可能な知的財産の1つで、地理的表示(GI)とは異なる商標(トレードマーク)の扱いとなる。詳細は2025年7月29日記事参照

(古城達也)

(日本、メキシコ、チリ、ペルー、EU、英国、米国、世界)

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