地域団体商標の登録は増加、インバウンドや海外展開に向けた活用促進へ
(日本)
農林水産食品部市場開拓課
2025年07月29日
日本の特許庁が6月30日に公表した資料によると、2025年上半期(1~6月)に新たに7件の地域団体商標が登録された。新規登録となったのは、栗東いちじく(滋賀県、登録日6月26日)、奈良団扇(奈良県、6月13日)、平山温泉(熊本県、6月9日)、奈良酒(奈良県、4月11日)、桐岡ナス(佐賀県、3月25日)、親田辛味大根(長野県、2月25日)、摩周和牛(北海道、1月15日)の7件だ。これで地域団体商標は累計で784件(注1)となった。新規登録件数は2022年27件、2023年19件、2024年22件と、徐々にではあるが、増加傾向にある。
地域団体商標制度は、地域の産品などについて、事業者の信用維持を図り、地域ブランドの保護による地域経済の活性化を目的として、2006年に導入された。地域ブランドとして用いられることが多い地域の名称や商品(サービス)の名称などからなる文字商標について、登録できる知的財産の1つで、地理的表示(GI)とは異なり、商標(トレードマーク)だ。(注2)
地域団体商標の登録品目は、工芸品や温泉、商店街など商品やサービスも対象だが、青果物や畜産物、水産物、加工食品など、地域の特産品の農林水産物や食品の親和性が良いため、同分野の登録件数が多い。特に近年はインバウンド(訪日観光客)向けの地域の特性を生かしたブランディングや、プロモーションでの活用が期待されている。また、国内のみならず、海外でも商標登録することで、知的財産として同産品のブランディングの1つに活用できる。
経済産業省、特許庁「地域団体商標ガイドブック~活用編~2024」では、米国、EU、中国に輸出されている「枝幸ほたて」(北海道)や、ドイツへの輸出をターゲットにする「うれしの茶」(佐賀県)、米国、アジア、欧州などへ広く輸出を図る「球磨焼酎」(熊本県)など、海外輸出拡大や国内外でのブランド力向上に地域団体商標を活用する事例が掲載されている。
また、近畿経済産業局「地域団体商標等の活用を含む地域ブランド振興の取組事例集」(2025年7月)では、訪日客に人気の「泉州タオル」(大阪府)の事例などがまとめられている。
今後より一層、日本の生産者や事業者が地域団体商標制度を活用することで、日本産農林水産食品などの地域ブランド確立や輸出拡大につながることが期待される。
(注1)商標権は、権利の存続期間(原則10年間)の満了などの理由により消滅がある。現在も権利が存続している地域団体商標の件数。
(注2)地理的表示(GI)は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価などの特性を有する産品の名称で、生産地や特性、生産方法等の基準とともに登録し、保護するものだ。
(古城達也)
(日本)
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