米国によるニカラグアへの輸入制限措置の検討で、ニカラグア経済に深刻な影響懸念
(ニカラグア、米国、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ドミニカ共和国)
調査部米州課
2025年10月27日
ニカラグアの現地紙「ラ・プレンサ」は10月22日、米国通商代表部(USTR)が同月20日にニカラグアに対して1974年通商法第301条に基づく調査を完了し、その結果、同国に追加関税などの輸入制限措置を講じることが妥当と判断したことを受け、国内経済や雇用への影響を報じた。
USTRが公表した措置案は、ニカラグア産品に対する「ドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(DR-CAFTA)」に基づく関税減免を含めた優遇措置の全部、または一部の即時、または段階的停止、ニカラグア産品の全部、または一部に対する12カ月以内の最大100%の追加関税の即時、または段階的な賦課だ(2025年10月22日記事参照)。
DR-CAFTAは、2004年8月に米国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、ドミニカ共和国との間で調印された自由貿易協定(FTA)だ。関税撤廃や越境サービス貿易自由化、投資、政府調達、知財、電子商取引、環境、労働など幅広い分野を含む。ニカラグアでは2006年4月1日に発効している。
10月22日付現地紙「ラ・プレンサ」では、国内繊維産業への影響や、米国に製品供給を行う在ニカラグア企業の活動停滞によって、GDPが3~4ポイント減少する可能性を懸念している。数万人規模の雇用喪失に加え、特に影響を受ける国内産業として、繊維・縫製産業に加えて、自動車部品、牛肉やコーヒー含む農産品を挙げている。DR-CAFTAでは、繊維や衣料品分野の原産地規則で、数量制限はあるものの、メキシコやカナダ産の原材料を中米の締約国内の原材料とともに原産品として累積することができる。また、一部の縫製品については、裁断や縫製を締約国内で行っていれば、無関税扱いとなり、同分野に競争力が生まれていた。
21日付現地紙「ニカラグア・インベスティガ」によると、ニカラグアにとって米国は最大の貿易相手国であり、この度の措置案がニカラグアの海外直接投資動向に与える影響は大きい。なお、USTRは10月20日から11月19日まで、ウェブサイトでパブリックコメントを募集している。今後はパブリックコメントなどを踏まえ、2025年12月中に措置内容を最終決定し、2026年1月中に措置を発動する見込みだ(2025年10月22日記事参照)。
(辻本希世)
(ニカラグア、米国、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ドミニカ共和国)
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