カンボジアの2026年最低賃金、月額210ドルに決定
(カンボジア、タイ)
プノンペン発
2025年10月21日
カンボジア労働・職業訓練省は9月17日、2026年の最低賃金を月額210ドル(試用期間中は208ドル)とする省令第214号を発表した。現行の208ドルから2ドルの少額の引き上げにとどまった。最低賃金は2026年1月1日から適用する。
同国では毎年夏から9月にかけて労使政三者構成の最低賃金諮問委員会で翌年の最低賃金を協議する。今回は労働者側が232ドルを要求する一方、使用者側は米国のトランプ関税の影響によるコスト増などを理由に慎重な姿勢を維持した。最終的に委員会は最低賃金を208ドルで据え置く案を提示し、そこにフン・マネット首相が2ドル上乗せして決着した。
カンボジアの最低賃金は近隣のタイと比較すると、安価な水準にある。タイで製造業が集積するチョンブリー県やラヨーン県の最低賃金は日額400バーツ(約1,840円、1バーツ=約4.6円、1バーツ=約0.03ドル換算で約12ドル)だ。カンボジアの工場は土曜日も稼働することが一般的なため、月26日で換算すると、月額210ドルだと日額で約8ドルとなり、タイの7割弱だ。
なお、タイとの国境紛争を受けて、カンボジア政府は120万人以上の出稼ぎ労働者に帰国を呼びかけている(2025年6月24日記事参照)。そのため、今後は大量の帰国労働者の雇用を確保するという課題がある。政府は帰国者の再雇用支援を進めつつ、国内雇用の安定化を図る考えを示している。
今回の最低賃金改定は、外資誘致や輸出競争力への配慮を維持しながら、労働者保護を両立させる「調整型の引き上げ」と位置づけられる。今後も物価や為替の動向、近隣国の賃金政策が次年度以降の議論に影響を与える見通しだ。
(山口乗子)
(カンボジア、タイ)
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