エアビーアンドビーの創業ストーリーから学ぶ、スタンフォード起業家育成プログラム

(米国、日本)

サンフランシスコ発

2025年10月10日

ジェトロは8月25日〜9月16日に経済産業省と共催で、「J-StarXグローバルなスタートアップを目指す学生コーススタンフォードコース(学生)」を米国カリフォルニア州のスタンフォード大学で開催した(2025年9月25日記事参照)。後半のプログラムでは、9月8日にシェアリングエコノミー(注1)を代表するユニコーン企業エアビーアンドビー(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)を訪問した。

同社は2007年に「エアベッド・アンド・ブレックファースト」として、簡易なエアベッドと朝食付きの宿泊先を提供するサービスとして創業したが、当初は予約が入らず、資金繰りも厳しかった。しかし、2008年の米大統領選の際に朝食用シリアル販売で資金を得るなど、創意工夫を重ね、事業を立て直した。やがてプラットフォームを「宿泊先提供」から「ホストと宿泊客のマッチング」へと転換し、成長軌道に乗った。

このピボット(方向転換)という経験には、失敗しても諦めない姿勢と、「未来の技術が社会にどう受け入れられるか」という文脈で、企業のミッションを消費者に魅力的、かつ分かりやすいかたちで打ち出す重要性が含まれている。このプログラムで学生たちは、アップルやコカ・コーラなど米大手企業のミッションステートメントとその事業内容をマッチングさせるゲームを通じて、「どのようなミッションが消費者に響き、従業員の意欲を高め、スタートアップを成長へ導く原動力となるのか」を考察し、議論する機会を得た。

写真 (左)エアビーアンドビー訪問、(右)投資家とのスピードデイティング(ともにジェトロ撮影)

(左)エアビーアンドビー訪問、(右)投資家とのスピードデイティング(ともにジェトロ撮影)

最終日前日の9月15日には、学生たちの目的の1つ、自らのアイデアをストーリーとしてまとめ、ピッチを完成させる実習が行われた。実際にエンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を前に、「スピードデイティング」(注2)が実施され、インストラクターは「練習あるのみ」と強調した。学生たちは短時間でのピッチを繰り返し、投資家から市場規模や収益計画などの質問を受け、事業案を見直す契機とした。参加した学生から「最初に用意したスライドから大きく内容が変化した」との声もあり、投資家目線のフィードバックを通じてピッチが洗練されていった。

(注1)インターネットを通じ、個人が保有する遊休資産(住宅、車両、スキルなど)を他者と共有、利用し合うことで成り立つ新しい経済活動の形態。

(注2)起業家が短時間で複数の投資家と順番に対話する形式で、投資家も複数のスタートアップと効率的に面談できる。

(松井美樹)

(米国、日本)

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