米下院中国特別委、米国などの半導体製造装置企業と中国の関係をまとめた報告書を発表

(米国、中国、日本、オランダ)

ニューヨーク発

2025年10月09日

米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委)」のジョン・ムーレナー委員長(共和党、ミシガン州)とラジャ・クリシュナムルティ少数党筆頭理事(民主党、イリノイ州)は10月7日、中国の半導体生産能力と米国などの半導体製造装置(SME)企業との関係に関する報告書を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の報告書の作成にあたり、ムーレナー委員長らは2024年11月に、SME大手である米国のKLA、アプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、日本の東京エレクトロン、オランダのASMLの5社に対して、各社の対中ビジネスに関する質問状を送付していた(2024年11月13日記事参照)。

報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、調査対象となった企業が、中国の国有企業や軍に関係する企業にSMEを販売していると指摘した。その上で、中国の半導体産業が成長することで、次のような安全保障上の脅威があると述べた。

  • 軍事:中国人民解放軍による米軍・同盟軍兵士の殺傷に利用され得る、人工知能(AI)と高性能コンピューティングを活用した兵器への先端半導体の利用。
  • 貿易:中国内での垂直統合型の半導体製造産業の構築で、米国や同盟国による輸出規制の影響を受けない経済体制が確立する恐れ。
  • 経済安全保障:レガシー半導体と先端半導体、双方の生産能力の寡占。
  • 人権:AIと高性能コンピューティングの人権侵害への利用。

報告書ではまた、半導体の設計・製造能力は中国との技術競争の核心で、現状、SMEは米国と同盟国が中国に対して、優位性を保つための重要なチョークポイントだと指摘した。そのため、米国政府は輸出管理政策などの策定にあたって同盟国・パートナー国と協力して優位性を維持しなければならないとして、次の提言をした。

  • オランダや日本など同盟国の輸出管理を米国の規制と整合させる。
  • 中国全てを対象にするような輸出管理政策を用いて、転用を困難にする。
  • 規制対象リストを拡大し、全ての同盟国企業による中国の軍事機関への販売を禁止する。
  • SMEの生産に重要な部品の輸出を制限する。
  • 輸出管理に関する新たな内部告発者保護プログラムを創設する。
  • 輸出管理を所管する商務省産業安全保障局(BIS)と国務省の執行・外交能力強化のため予算と人員を拡大する。
  • 政府と産業界の連携強化や米国のSME企業のグローバル人材育成・人材獲得支援を通じ、SMEにおける米国および同盟国のイノベーションとリーダーシップを確保する。

今回の報告書に基づく提言などは法的拘束力を持たないものの、両国間には、米国による先端半導体、中国によるレアアースなどに対する輸出管理が主要な懸案事項としてあるため、今後のトランプ政権の輸出管理政策(注)にどういった影響を与えるかが注目される。ドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席は10~11月に韓国で行われるAPEC首脳会議にあわせて会談するとみられており、両国の輸出管理政策が主要な議題の1つになる可能性がある。

(注)トランプ政権の輸出管理の方針については、2025年8月6日付地域・分析レポート参照

(赤平大寿)

(米国、中国、日本、オランダ)

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