9月のインフレ率は前年同月比1.54%に低下、8年ぶりの低水準

(インド)

ムンバイ発

2025年10月15日

インド統計・計画実施省(MoSPI)が10月13日に公表した9月の全国ベースの消費者物価指数(CPI、注1)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は197.2ポイント(速報値)で、前年同月比の上昇率は1.54%と、8月(2.07%)から0.53ポイント低下した。上昇率は2017年6月以来、約8年ぶりの低水準となり、インド準備銀行(RBI、中央銀行)の物価安定目標(4%±2%)の下限を下回る水準だった(添付資料図参照)。

食品のインフレ率(注2)は前年同月比マイナス2.28%で、8月(マイナス0.69%)から1.59ポイント低下した。特に野菜(マイナス21.38%)、豆類(マイナス15.32%)、香辛料(マイナス3.07%)などの下落が続いた一方で、油脂(18.34%)、果物(9.93%)、卵(2.76%)などは上昇した。地域別では都市部が2.04%、農村部が1.07%だった。

市場関係者の間では、物価の落ち着きが広範な分野に及んでいるとの見方がある一方、「今後の動向を慎重に見極めるべきだ」とする声も一部聞かれる。

地場格付け会社インド・レーティングス・アンド・リサーチのエコノミスト、パラス・ジャスライ氏は「農村部では都市部に比べて低いインフレが続いている。主要23品目群のうち17品目で9月のインフレ率が前月から低下し、2024年4月以来、最大の下落幅となった。これは消費全体にわたり、安定した物価動向が定着しつつあることを示している」と述べた(「インディアン・エクスプレス」紙10月14日)。

また、コタック・マヒンドラ銀行のチーフエコノミスト、ウパスナ・バルドワジ氏は「9月のCPIの鈍化は、物価の安定傾向が続いていることを示している」と述べた上で、「食品価格の下落が全体を押し下げる一方、住宅など一部では上昇圧力も残っている。物品・サービス税(GST)引き下げ(注3)効果は10月以降の統計でより明確になり、今後インフレ率は1%を下回る可能性もある」と指摘した(「エコノミック・タイムズ」紙10月13日)。

(注1)全国ベースのCPIは、基準年の2012年を100とし、農村部と都市部の各CPIを加重平均したもの。

(注2)ここでは、CFPI(消費者食品物価指数)のインフレ率を記載。

(注3)GSTの引き下げについては、2025年9月25日記事参照。

(篠田正大)

(インド)

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