2025年のGDP成長率見通しを2.6%に上方修正、先進国中で最高の見込み
(スペイン)
マドリード発
2025年10月02日
スペイン中央銀行は9月16日に発表したマクロ経済予測(毎四半期発表)で、2025年の実質GDP成長率の見通しを2.6%と、前回6月の予測から0.2ポイント上方修正した(添付資料表参照)。今回の上方修正は、第2四半期(4~6月)が予想を上回る好調だったことによる。成長を主に牽引したのは内需で、金融環境の改善により、民間消費と投資が堅調に推移した。第3四半期(7~9月)もこの勢いが持続する見込みだ。
エネルギー価格やユーロの高止まり、輸出減速は小幅ながら成長抑制要因となるが、その一方で、ユーロ高によって輸入価格の上昇圧力が和らぐ見通しとしている。インフレ率は、2025年前半のエネルギー価格の上昇により、同年は2.5%となる見込みだ。2026年には欧州中央銀行(ECB)目標値の2%を下回るが、2027年は新たなEU排出量取引制度(EU ETS II)の導入によるコスト上昇の影響で、2.4%と予想している。
7月に大枠合意した米国の対EU追加関税(2025年7月29日記事、2025年8月22日記事参照)については、スペインに対する実効関税率は2024年時点と比較して15.3ポイント上昇し、EU平均(同12.6ポイント増)を大きく上回るが、米国への輸出依存度が1%(EU平均は3%)と小さいため、直接的影響は軽微とみている。
スペインの好調は2025年がピーク、以後は緩やかに減速
スペインは2022年以降、地政学リスクが顕在化する中で、EUの中でも際立って経済が堅調だ。9月23日のOECD「世界経済見通し」でも、2025年は先進国の中で最も高い成長率が見込まれる。
中銀は好調の要因として、(1)雇用の力強い伸びと名目賃金の上昇、(2)インフレ減速による家計購買力の向上、(3)移民流入を主因とする人口・労働供給増による成長の土台拡大、加えて(4)EU復興基金によるインフラ、デジタル化、グリーン分野への投資加速、(5)観光好調を背景とするサービス観光の成長を挙げ、内外需の両輪で経済を牽引したと分析している。
今回の見通しでは、2026年のGDP成長率は1.8%、2027年は1.7%と、前回予想を据え置き、中期的には減速基調を見込んでいる。輸出はゆるやかに減速する。一方、内需は民間消費がやや減速しつつも、復興基金プロジェクトの展開や住宅投資によって投資が堅調となり、政府支出は防衛支出の増加で押し上げられ、内需主導となっていく見通しという。
なお、スペイン統計局(INE)が9月26日に発表した第2四半期GDP確報値は前期比0.8%で、7月発表の暫定値より0.1ポイント上方修正した。また、9月19日発表の年次見直しにより、2024年の成長率が0.3ポイント増の3.5%に上方修正されたことで、中銀の2025年GDP予測に上振れが生じる可能性もある。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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