ティックトック、インドで求人募集開始するも、政府は利用再開を否定

(インド、中国)

調査部アジア大洋州課

2025年09月03日

ショート動画アプリ「ティックトック(TikTok)」(注)を提供する中国のテクノロジー企業バイトダンス(Byte Dance)がインドの首都ニューデリー近郊の北部グルグラム(旧・グルガオン)のオフィスで求人募集を開始したと報じられた(「エコノミック・タイムズ」紙8月31日)。

インド政府は中国軍との軍事衝突を受け、国家安全保障上の観点から、2020年6月にインド国内でTikTokを含む59個の中国製アプリの使用を禁止した。バイトダンスにとってインドは極めて重要で、約2億人のTikTokユーザーを抱える世界第2位の市場だった。同アプリが禁止される直前の2020年3月までのインドでの累計ダウンロード数は6億1,100万件で、全世界の約3割を占めていたほどだ。バイトダンスの求人募集の開始以降、国内で同社のウェブサイトは一部アクセス可能となったが、インド政府関係者はTikTokの再開に関する許可は出ていないとしている。

一方、中国の王毅・中国共産党中央政治局委員兼外交部長(外相)は8月18日から19日にかけてインドを訪問し、ナレンドラ・モディ首相やスブラマンヤム・ジャイシャンカール外相らと会談して協力関係発展を強調するなど、両国間の関係回復に向けた兆候も見られる(2025年8月22日記事参照)。

中国との関係回復を契機にインド国内でTikTokが再開した場合、インスタグラムリール(Instagram Reels)やユーチューブショート(YouTube Shorts)、国産アプリのモージ(Moj)やジョシュ(Josh)が主流のインドのショート動画市場でシェアが再構築される可能性がある。

(注)音楽に合わせた短い動画を作成し、共有できる動画配信アプリ。

(野本直希)

(インド、中国)

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