スポーツ消費促進措置を発表、2030年までにスポーツ産業規模を7兆元へ
(中国)
北京発
2025年09月11日
中国国務院は9月4日、「スポーツ消費の潜在力を引き出し、スポーツ産業の質の高い発展を推進することに関する意見」を発表した。
意見では、2030年までに、一連の国際的影響力を持つスポーツ企業とスポーツイベントを生み出すほか、スポーツ産業の規模を7兆元(約143兆5,000億円、1元=約20.5円)超に拡大する目標が打ち出された(注1)。2025年8月22日の国務院常務会議では、同意見について議論が行われ、スポーツ産業の発展とスポーツ消費の促進は、内需拡大戦略を推進するうえでの重点取組みと位置づけられた(注2)。
同意見では、(1)スポーツ商品の供給拡大、(2)スポーツ消費の需要喚起、(3)スポーツ企業の規模拡大、(4)スポーツ産業における新たな原動力の育成、(5)人材や金融面における支援策の強化、(6)サービスの向上といった計6分野、20項目の措置を盛り込んでいる。
(1)では、スポーツイベントの発展政策を策定し、知的財産権と国際的影響力を持つスポーツイベントブランドを育成するほか、公道や水域などの公共資源をスポーツイベントのために開放し、関連する許認可プロセスを効率化するとした。また、新たなアウトドアスポーツ産業発展規画(注3)を策定し、各地の自然資源の特性に基づくアウトドアスポーツを差別化して発展させるほか、低空スポーツ、模型航空競技、フライトシミュレーションなどの低空イベントを開催する。そのほか、ウインタースポーツ消費の優遇策を継続し、条件を満たすウインタースポーツ関連設備を設備更新支援策(注4)の適用対象にするよう支援する。
(2)では、スポーツ消費シーンの開拓、「試合観戦のための旅行」などのスポーツ消費イベントの開催、消費喚起のための優遇策の実施、スポーツ消費者層の拡大に取り組むとした。
(3)では、民営企業によるスポーツ産業への投資を支援すること、公共スポーツ施設の改修・改良を奨励するとした。また、条件を満たすスポーツ施設の設備を、設備更新支援策の適用対象にするよう支援するとした。そのほか、スポーツ産業における交流・協力を強化し、国際競争力と影響力を持つスポーツ企業グループを育成することなどが挙げられている。
(4)では、スポーツと観光・文化、ヘルスケアなど他の産業との融合を強化するほか、「データ要素×スポーツ」行動を推進し、ビッグデータや人工知能(AI)を活用した製品・サービスの開発を支援するとした。
(注1)国家体育総局体育経済司の楊雪鶇司長は8月19日に開催された国務院の記者会見で、2023年のスポーツ産業規模は3兆6,700億元となり、前年比で10.3%増だったと言及した。
(注2)中国政府は2025年の重点取り組みとして、内需拡大を最重要課題と位置づけている(2025年3月6日記事参照)。3月16日に発表された「消費振興特別行動プラン」では、スポーツ消費の拡大などが盛り込まれている(2025年3月24日記事参照)。
(注3)中国の国家体育総局などは2022年11月に「アウトドアスポーツ産業発展規画(2022~2025年)」を発表し、2025年までにアウトドアスポーツ産業規模を3兆元超にする目標を打ち出した(2022年11月17日記事参照)。
(注4)中国では、投資と消費の拡大を図るため、中央政府の各部門、各省・市レベルで設備の更新や消費財の買い替えに関する政策を相次いで打ち出している。詳細については、ジェトロの特集「中国の設備更新と消費財買い替え推進政策の最新動向」を参照。
(張敏)
(中国)
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