ラマポーザ大統領、オンラインのBRICS首脳会議に出席

(南アフリカ共和国、中国、インド、ブラジル、ロシア、米国)

ヨハネスブルク発

2025年09月11日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は9月8日、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領が呼びかけた、オンラインでのBRICS臨時首脳会議に出席した。報道によると、中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も出席したが、インドのナレンドラ・モディ首相は欠席した。南ア大統領府の発表では、会議では世界情勢と多国間体制に影響を与える現在の世界的な地政学的・経済的課題が議論されたという。

ラマポーザ大統領は、冒頭、米国の相互関税措置を念頭に「一方的な関税措置は、ますます保護主義的な環境を助長し、グローバルサウス諸国に大きな困難と危険をもたらしている」と述べるとともに、「南アでは新たな貿易体制の不確実性は既に雇用水準に悪影響を与え、経済成長の障害となっている」との認識を示した。直接的な米国への批判は避けつつも、ルールに基づかない一方的な措置が、世界経済とりわけグローバルサウスと呼ばれる新興国・地域に大きな打撃を与えているとした。その上で、「BRICS諸国およびグローバルサウス諸国の経済の強靭(きょうじん)性を向上させ、世界的な多国間システムを強化するBRICSイニシアチブを支持する」「BRICS諸国は、多国間システムの強化において重要な役割を担うべきである」と表明した。

また、「南アはWTOが主導する改革イニシアチブへの支持をあらためて表明する」「BRICS諸国はWTOで行われている改革を支持しなければならない」、さらに「南アはすべての加盟国が開発目標を達成できるようになるまで、WTOと国連を中核とする多国間貿易システムを維持しなければならないという確固たる信念を堅持している」とも述べ、貿易ルールに関する多国間での協議や意思決定を尊重する意向を示した。

南アは2025年に、アフリカ諸国で初めてのG20議長国を務めている。ラマポーザ大統領はかねて「G20にアフリカの声を届ける」との意気込みを語っていた(2025年2月26日記事参照)が、分断が広がる世界情勢の中で、現状の国際機関や対話の枠組みが有効な解決策を見いだせないことにも危機感を抱いている。

声明の中で、ラマポーザ大統領はG20議長国として、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ教授を委員長とする「世界の富の不平等に関する独立専門家特別委員会」を立ち上げ、同委員会が世界の不平等に関する報告書をG20首脳に提出する予定と述べた。富と所得の不平等の現状、それが成長、貧困、多国間主義に及ぼす影響について報告し、リーダーたちに向けて効果的な解決策のメニューを提示するという。

こうした中で、ドナルド・トランプ米大統領の経済顧問を務めるピーター・ナバロ氏はメディアに対し、「BRICS諸国は不公正な貿易慣行で米国の血を吸い尽くす、吸血鬼だ」との辛辣(しんらつ)な言葉で不快感を表明した(9月9日付インド経済紙「エコノミック・タイムズ」)。

(的場真太郎)

(南アフリカ共和国、中国、インド、ブラジル、ロシア、米国)

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