欧州委、次期中期予算計画(MFF)案の分野別プログラム発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年09月09日

欧州委員会は9月3日、2028年から2034年までの次期中期予算計画(MFF)案の分野別プログラムの詳細を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これは、欧州委が7月に発表した産業振興予算である欧州競争力基金などの次期MFF案の主要部分(2025年7月22日記事参照)に続くものだ。今回の発表で次期MFF案が全て提案されたことから、2027年まで続くとみられる次期MFF案を巡る議論は今後本格化するとみられる。

今回発表した分野別プログラムは次のとおり。

  • 単一市場・関税:EU加盟国間の障壁撤廃や加盟国当局間の協力強化など、さらなる単一市場の実現に向け、既存の5つのプログラムを統合。予算も現行MFFから倍増の62億ユーロを提案する。
  • 司法協力:民事・刑事の司法協力、司法分野の人材育成などを実施。約8億ユーロを割り当てる。
  • 加盟国の海外領土支援:デンマークの自治領グリーンランドを含む加盟国の13海外領土向けの10億ユーロ規模の支援策。
  • 第5次ペリクレス・プログラム:EU共通通貨ユーロの偽造や関連詐欺への対策。

このほか、欧州委は原子力分野のプログラムも発表した。総額98億ユーロ規模のプログラムは、原子力の安全性や放射線防護、放射性廃棄物管理、人材育成のほか、核融合や小型モジュール炉(SMR)開発など幅広く支援するものだ。同プログラム予算の半分強は、EUのほか日本も参加する国際プロジェクトとして、フランスで建設が進む世界初の大規模核融合実験炉(ITER)に割り当てられる。このほか、リトアニアの原子力発電所の廃炉支援も引き続き実施する。

欧州委は域内産業の競争力強化に向け、再生可能エネルギー(再エネ)優遇政策を修正し、再エネだけでなく、原子力など脱炭素化に資する幅広いクリーンエネルギーを重視する現実路線を打ち出している(2025年3月4日記事参照)。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 cc62d29192a59f45