メキシコ大蔵公債省、2026年予算案を発表

(メキシコ)

メキシコ発

2025年09月19日

メキシコ大蔵公債省は9月8日、2026年度(注)歳入法案と歳出計画を国会に提出した。同歳入法案と歳出計画をみると、基礎的財政収支(プライマリー収支)はGDP比で0.5%と前年比0.1ポイント低いものの黒字とした。一方、総合財政収支は3.6%の赤字で、前年度よりわずか0.4ポイントの赤字幅拡大を見込んでいる。歳入は前年度予算比4.6%増加し、歳出も5.9%増加しており、歳出が歳入を上回っている。また、債務残高のGDP比は2025年度予算よりも増加し、52.3%と試算している。

予算策定の前提となる「2026年経済政策一般基準(CGPE2026)」によると、政府は2026年の経済(GDP)成長率を1.8~2.8%(中間値2.3%)と見込んでいる(添付資料表参照)。民間シンクタンク45社の経済成長率見通しの平均値(2025年9月1日中央銀行発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))は1.34%、中央銀行が8月28日に発表した成長率見通しはさらに低く1.1%であり、前年と同じく楽観的な数値を採用している。2026年のインフレ率見通しは3.5%と、中銀の3.0%よりは高いが、前述の民間シンクタンクの見通し平均値の3.74%よりは低い。また、米国の2026年の実質GDP成長率を1.9%と試算しており、民間シンクタンクの見通し平均値の1.77%と比較しても若干高い数値を設定している。

新規の税制改革はなく、専門家は公平な税制改革を要望

クラウディア・シェインバウム大統領は、9月10日の早朝記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで経済パッケージに関して「第1に福祉プログラムを保証し、第2に健康・医療〔保健省、社会保険庁(IMSS)、公務員社会保険庁(ISSSTE)〕への投資を増加させる。また、教育、住宅、インフラ(鉄道、道路、水道)への公共投資も増加させる」と述べ、メキシコ国民の権利を保障するとともに、投資も積極的に行う姿勢を強調した。また、付加価値税や所得税などの増税ではなく、関税法の改正(2025年9月16日記事参照)による徴収強化や、加糖飲料やたばこ、暴力的なビデオゲームに対する生産サービス特別税(IEPS)の料率を上げることで税収増加を図るとした。また、脱税対策として、国税庁(SAT)の監視強化に加え、電子インボイス発行の規制強化を行うことで企業の取引の監視強化を行うとした。

一方で、専門家は、債務残高の増加や福祉プログラムへの巨額の支出に対して警鐘を鳴らしている。民間の研究機関である経済・予算調査センター(CIEP)は、9月11日に発表した2026年予算案に対する提言の中で、徴収の効率化や特別税・関税の拡大に進展がみられるものの、高い債務コスト、エネルギー補助金および年金に支出が集中しており、財政面の課題が残っていることを指摘。税制の正当性や世代間の公平性を確保するため、恒常的な歳入を増やし、逆進的な補助金を削減し、支出を社会投資、再エネ移行などへと再分配する漸進的な税制改革が必要だと訴えた。

(注)メキシコの会計年度は暦年(1~12月)。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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