欧州自動車工業会、EVバッテリーのEU域内調達率の目標設定で提言
(EU)
ブリュッセル発
2025年09月08日
欧州自動車工業会(ACEA)は9月1日、電気自動車(EV)用バッテリーの現地調達率の法制化について、提言書を発表した(プレスリリース
)。
欧州委員会はEU域内のクリーンテック市場振興を目的に、「クリーン産業ディール」(2025年3月4日記事参照)で公共・民間調達での持続可能性や強靭(きょうじん)性、域内調達率など、価格以外の基準の導入を提案している。3月に発表した「自動車部門に関する産業行動計画」(2025年3月13日記事参照)では、バッテリーの域内生産拡大に向け、域内調達率の規定を設ける方針を示した。
ACEAはこうした基準を導入するに当たり、定義や対象製品、適用開始時期を明確にしなければ、サプライチェーンの混乱や競争力の低下につながると指摘している。高い域内調達率の目標設定は、域内バリューチェーン構築の「特効薬」ではないと、欧州委を牽制し、エネルギー価格の引き下げや許認可の効率化、労働者の技能向上・確保などを含め、包括的な取り組みが必要と強調した。
その上で、法制化するのであれば、徹底的な影響評価や専門家との協議を事前に実施することや、規定の内容や適用などに関し、次の観点を考慮するよう提言した。
- バッテリー規則(2023年8月21日記事参照)など現行の法令との一貫性を確保し、重複を避ける。企業に課す報告要件はできるだけ少なくする。
- 規制導入前に十分なリードタイムを設定し、車種ごとに開始時期や内容を定める。
- 域内調達を義務化する場合、生産コストの上昇を相殺するため、国家補助や優遇税制措置など、企業向けインセンティブを実施する。
- バッテリーのバリューチェーン構築には域外企業の協力が不可欠で、域内産自動車の約3分の1は輸出されている現状に鑑み、締結済みの自由貿易協定(FTA)やWTOルールの原産地規則に基づくものとする。
- 域内調達率の計算では、第三国で生産される製品を含める条件などを慎重に検討する。例えば、相互主義を基本とし、EUとFTA、または関税同盟を締結済みの国・地域に重点を置く、もしくは、こうした国・地域で生産された製品は「EU産」の定義に当てはまるものとするかどうかを検討する。
- 原産性の判断に関連し、関税分類の変更は事務的負担が最も少ない選択肢となる可能性がある。技術の進歩に合わせたルール設計が必要で、事業者の負担増につながる付加価値基準の策定は避ける。
(滝澤祥子)
(EU)
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