「欧州クリーン輸送回廊イニシアチブ」が始動、EU加盟9カ国が協力

(EU)

ブリュッセル発

2025年09月22日

欧州委員会は9月16日、汎(はん)欧州運輸ネットワーク(TEN-T)上の大型車の充電インフラ整備加速に向けた「欧州クリーン輸送回廊イニシアチブ」を提示し、ドイツなどEU加盟9カ国(注1)の支持を受けたと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同イニシアチブは「自動車部門に関する産業行動計画」(2025年3月13日記事参照)で打ち出され、大型車用充電インフラの拡充を目的とする。欧州委の「競争力コンパス」の競争力政策調整ツール(2025年2月6日記事参照)に基づき、再生可能エネルギー(再エネ)指令による送電網整備関連も含め(2025年8月7日記事参照)、許認可の迅速化と、投資リスクを軽減する融資の活性化に焦点を当て実施される。

第1弾として、スカンジナビア半島からイタリアのシチリア島、北海沿岸からバルト海周辺国を結ぶ2回廊をパイロットケースに選定し、充電ステーションを2回廊合計で236カ所増設し、総計353カ所にする(欧州委発表資料参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。今後、他の回廊についても、同様に加盟国と取り組みを進めていく方針だ。

9カ国の運輸・インフラ担当閣僚は同日に閣僚宣言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表し、2030年を目標に国境を越えたゼロエミッション貨物輸送の円滑化に向け、次の取り組みを進める。

  • 充電インフラ整備のエネルギー関連政策との連動による運輸政策で戦略的優先項目化。
  • 欧州委、2回廊周辺の地方自治体や電力事業者が協力し、送電網の既存容量の適時かつ柔軟な活用や環境・建設分野の許認可の簡素化、再エネ導入可能量の明確化などを推進。
  • 欧州委と他の加盟国に対し、TEN-T上の回廊での充電インフラ整備の設置状況や投資ニーズに係るデータを定期的に提供。
  • バッテリーの蓄電システムや再エネの活用など、充電インフラ整備を加速させる施策を特定して実施。

さらに、欧州委などと連携し、2026年3月までに包括的なロードマップを策定するほか、ベストプラクティスの共有や相互利用可能なプラットフォームの開発、さらに、進捗状況のモニタリングシステムの提供を目指す。

欧州自動車工業会の7月30日付の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、EUの2025年上半期(1~6月)のトラック市場における電動車(ECV、注2)の割合は、前年同期に比べ1.5ポイント増だが、3.6%にとどまり、充電インフラ整備の遅れも普及が進まない要因の1つとなっている。

(注1)ドイツ、ベルギー、デンマーク、リトアニア、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、スウェーデンの9カ国。

(注2)ECV(Electrically Chargeable Vehicle)とは、バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を指す。

(滝澤祥子)

(EU)

ビジネス短信 9f9607f967d04122