米国初の水素鉄道の運行が南カリフォルニアで開始
(米国)
ロサンゼルス発
2025年09月17日
米国初の水素燃料旅客列車が9月13日、カリフォルニア州南部のサンバナディーノ地域で運行を開始したと地元メディアが報じた。「ゼロ・エミッション・マルチプル・ユニット(ZEMU)」と呼ばれるプロジェクトの一環で、スイスの鉄道車両メーカーのシュタッドラー(Stadler)が開発した車両「FLIRT H2」を使用している。
この路線はサンバナディーノ郡交通局(SBCTA)とシュタッドラーとの契約によって実現した。車両のFLIRT H2は水素燃料とバッテリーを組み合わせたハイブリッド方式の動力システムを採用しており、米国連邦鉄道局(FRA)が定めたガイドラインに沿った初のゼロエミッション旅客鉄道として全米で注目されている。
導入された車両は2両編成で、中央に水素パワーパックを搭載しており、燃料電池と水素タンクを内蔵している。運行区間はダウンタウンのサンバナディーノ駅からレッドランズ駅を結ぶアロー回廊区間の9マイル(約14.5キロ)で、5つの駅の区間を終日運行し、1日の総走行距離は300~380マイル(約483~612キロ)と推定されている。このアロー区間は同地域の旅客鉄道システム「メトロリンク」のサンバナディーノ線の延長路線に当たり、ロサンゼルス市ダウンタウンのユニオン駅まで接続している。
一般公開された「FLIRT H2」車両の(ジェトロ撮影)
シュタッドラーのFLIRT利用はカリフォルニア州で拡大しており、次のプロジェクトが進められている。シュタッドラーは2023年10月に8,000万ドルの契約をカリフォルニア州運輸局(Caltrans)と締結し、4両編成の車両製造を受注した。この車両は北カリフォㇽニアのマーセドと州都サクラメント間の運行を計画している。これに加えて、Caltransは2024年2月に追加で6両編成の水素燃料の旅客列車をシュタッドラーから購入する1億2,700万ドルの契約を締結した。
同州ではゼロエミッションを推進する次世代交通の導入が急ピッチで進められている。バイデン前政権下の2023年に水素ハブの1つに選定されたカリフォルニア水素ハブ(ARCHES:Alliance for Renewable Clean Hydrogen Energy Systems)は、ゼロエミッションとクリーンエネルギー経済の拡大に不可欠なクリーンな再生可能水素の開発と導入を加速するため、米国エネルギー省(DOE)から最大12億ドルの支援を受けた(2023年10月25日記事参照)。しかし、トランプ政権によるクリーンエネルギー導入と開発に逆行する動きを受け、ギャビン・ニューサム州知事(民主党)は8月29日、クリーンエネルギーを推進する行政命令に署名し、同州がこれまで築いてきた環境対策の成果を守り、より迅速にクリーンエネルギーの導入を加速させることに取り組んでいる。
(サチエ・ヴァメーレン)
(米国)
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