上海市のイベントで中国高齢者ビジネスを議論、日本企業も登壇し取り組み紹介
(中国)
大連発
2025年09月29日
「第8回中国高齢者業界陸家嘴サミット」が9月16~17日、上海市で開催された。同サミットは、中国の高齢者ビジネスを取り巻く最新の政策や市場動向を共有し、現状や課題、展望について客観的に議論する場として、中国国内で注目度が高いイベントとなっている。参加費は有料で、2,880元(約6万円、1元=約21円)と決して安くはないが、約1,500人が参加した。
同サミットは2016年に始まり、2021年と2022年を除いて、毎年開催されている。初回は介護・福祉業界の数社が立ち上げ、2回目以降は中国最大規模の介護・福祉関連製品・サービス展示会「上海国際福祉機器展(AID)」(2025年6月25日記事参照)主催者の上海国展展覧中心と、初回の主催者の1社の恵州頤訊信息技術による共催の形式で継続されている。参加者数は年々増加しており、2025年は初回(約500人)を大幅に超える参加者数となった。
サミットの主要な注目点は「介護・福祉サービス」で、同業界の健全で持続的な発展に向けて、さまざまな角度から議論が行われている。2025年の議題は「良質な運営」「在宅・デイサービス」「介護現場でのIoT(モノのインターネット)技術の活用」「シルバー経済」だった。このうち前2項目は同サミットでよく取り上げられている議題、後2項目は今回初めて取り上げられた議題だった。
例年、発表者は介護・福祉施設を展開している中国企業が中心だが、一部外国企業も取り組みを紹介している。2025年の発表者は37社で、うち外国企業は2社だった。外国企業では、ドイツのRENAFANが議題「良質な運営」の講演者として、介護施設の運営で進出当初に直面した課題と解決に向けた取り組みを紹介した。また、日本のメディカルケアサービスが議題「シルバー経済」の講演者として、日本での高齢者向け研修や、高齢者限定のツーリズム、中高年層向けフィットネスなどの事例を紹介した。
主催者によると、例年登壇する介護・福祉施設の経営者は、施設、デイサービス、訪問介護、リハビリ・医療サービス、食事サービスなどを単独、または総合的に展開しており、多拠点、多地域で展開するケースも多く、大半は参入年数が5年以上となっている。中国では全国版の介護保険制度が整備されておらず、かつ、利用者の支払い能力がまだ限定されており、市場開拓が難しい点が最大の課題となっていることから、講演者の多くが試行錯誤を重ねながら安定的な収益モデルを模索する取り組みを紹介した。
中国では「一人っ子世代」の親(1950年代や1960年代生まれ)が既に60歳を超えており、高齢者関連ビジネスの主要顧客層になりつつある。この層は品質重視の志向が強い上、子供が1人のため家庭内の介護のみに頼ることが難しいという現実的な問題がある。2024年末時点の中国の65歳以上の高齢者人口は2億2,023万人で、今後は所得水準の向上や介護保険制度の整備によって、家庭外で提供される高齢者向けのサービスや商品に対するニーズが確実に増えていく可能性は十分高い。同市場への参入を検討する企業にとっては、まずは現地市場に対する的確な情報収集が非常に重要となる。
(呉冬梅)
(中国)
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