ジェトロ、シニア用品で日中協業促進、「上海国際福祉機器展」でフォーラム開催
(中国)
大連発
2025年06月25日
中国最大規模の介護・福祉関連製品・サービス展示会の「上海国際福祉機器展(AID)」が6月11~13日、上海新国際博覧センターで開催された。出展社数は519社、来場者数は7万6,591人で、過去最高を記録した2024年の規模(450社、5万7,147人)を超えた。
同展示会の特徴の1つは、商品またはサービスの調達に意欲的な中国バイヤーの来場が多いことだ(2024年10月7日記事参照)。日本企業の中国市場開拓を支援するため、ジェトロは2024年までは、同展示会に日本企業をまとめて出展、あるいは会期中に日中企業による商談会の開催を行ってきた。2025年の同展示会では、新たな企画として会期中の6月12日にフォーラムを開催した。
フォーラムのテーマは「日本の経験×中国スピード、シニア向け用品市場における日中連携の道」と設定した。中国のバイヤーに日本のシニア向け用品の発展の歴史や現状、日本企業の商品開発の背景にある開発理念などを客観的に伝え、理解を深めてもらうことを趣旨とした。来場者は主に中国バイヤーを想定し、269社の中国バイヤーが申し込んだ。
フォーラムのプログラムは、基調講演と日中企業によるピッチセッション、パネルディスカッションという項目で構成した。基調講演では、ジェトロ大連事務所の呉冬梅・市場開拓部長が「シニア向け用品を製造・販売する日本企業の中国進出動向」について、デロイトインフラ公共セクターの田中克幸外部調査員が「日本のシニア向け用品市場の近況」について、それぞれ紹介した。ピッチセッションでは、中国市場開拓に取り組んでいる日本企業2社、日本企業との連携を進めている中国企業2社が各社の取り組み状況や市場動向を紹介した。内容はそれぞれ、転倒防止など介護予防に向けた取り組み(創心会)や、革新的なデジタル技術を用いて遠近を連続的に見られるオートフォーカス機能を実現した商品紹介(ViXion)、日本の介護保険制度から学べる中国の福祉用具ビジネスのチャンスと挑戦(福寿康)、シニア向け用品の消費者向けビジネスの現状と展望(沐恒実業)だった。
パネルディスカッションでは、ピッチセッションに参加した企業を中心に登壇し、日本で蓄積した経験のうち、中国で参考にすべき点と現地化すべき点などについてディスカッションした。在宅介護大手の福寿康智慧医療養老服務(上海)の劉慶同プロジェクト総監は「中国では、施設整備などハード面は既に高いレベルに達している企業が多いが、ヘルパーやケアマネジャーなどの人材育成、介護・福祉制度の標準化の整備などはまだ遅れており、日本から学ぶべき点が多い」と指摘した。また、劉プロジェクト総監は、介護・福祉用品を含むシニア向け用品の市場開拓では「中国で速いスピードで進んでいるeコマースの活用も今後はますます重要になってくる」との認識を示した。
ジェトロでは、フォーラム申込企業に日本のシニア向け用品の調達意向を確認しており、131社が意向があると回答した。今後はそうした中国企業と日本企業のマッチングを実施し、日本企業の中国市場開拓支援を強化していく方針だ。
フォーラムの会場(ジェトロ撮影)
(呉冬梅)
(中国)
ビジネス短信 07bda94b2d272988