TICADでアフリカの「オタク」が日本アニメを議論、日本企業の進出望む声も

(アフリカ、日本、エジプト、南アフリカ共和国、ナイジェリア、カメルーン)

カイロ発

2025年09月02日

ジェトロは8月22日、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベント「TICAD Business EXPO & Conference(TBEC)」(2025年8月27日記事参照)において、パネルディスカッション「アフリカに浸透する日本アニメ!アフリカのオタクに聞くアニメ・マンガの魅力」を開催した。アフリカ市場の特徴の1つが若年層の多さであり、それを取り込む鍵の1つが日本のポップカルチャーだ。本パネルディスカッションでは、アフリカにおけるアニメ、ファンやコミュニティの実態について「オタク」自身から聞き、日本企業のビジネスチャンスを議論した。カメルーン生まれの漫画家の星野ルネ氏がモデレーターを務め、エジプトおよび南アフリカ共和国からコンテンツクリエーター、ナイジェリアからオタクイベント「Otaku Connect外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の創設者をパネリストとして迎えた。

オタクコミュニティの広がりについて、星野氏はカメルーンの小さな村で、「子供たちが『ドラゴンボール』の必殺技のフレーズとポーズで楽しんでいる」というエピソードを紹介した。エジプトのコスプレーヤーのジヤード・エルマハラウィ氏は、特定のキャラクターを愛する人どうしが世界中で共感を得る点で、日本のアニメが持つ「繋(つな)ぐ」力を評価した。星野氏は「日本人にとってアフリカは、はるか遠い大陸というイメージがあると思うが、日本のアニメやマンガを日本人と同じように楽しんでいる人々がアフリカにもたくさんいる」と述べた。

日本企業によるアニメ関連ビジネスの可能性について、ナイジェリアのOtaku Connectのジョージ・サディーオパラオチャ氏は、アニメ・マンガの市場は若年層を中心に広がっており、大きなポテンシャルがあると指摘した。ナイジェリアの若者は入場が有料のオタクイベントに大勢参加しており、購買意欲も高いという。南アのコンテンツクリエーターのシャキーラ・スィットフォーレ氏は、同国では「コミュニティが既に育っている」としたうえで、同国で年に一度開催されるポップカルチャー関連イベント「Comic Con Africa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」には毎年7万人が参加し、このイベントのためにお金をためているアニメファンも多いと紹介した。

また、スィットフォーレ氏は「アフリカでは高まるニーズに対してアニメグッズやコスプレグッズの供給が限らており、日本企業の参入を期待している」と述べた。サディーオパラオチャ氏は「ナイジェリアではアパレル、ポスター、フィギュアなどのアニメ関連製品の需要が旺盛である一方、流通している商品はほとんどが版権のない非正規の海賊版の輸入品であるため、正規品の流通経路確立が急務だ」と述べた。エルマハラウィ氏は、エジプトでも商品ラインアップがごく限られており、「ファンはどんな商品でも渇望している」と、日本のアニメ関連企業の版権ビジネス進出を強く望んでいると訴えた。

なお、現地事情については「アフリカにおける日本のポップカルチャーの可能性を探る」も参照。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(塩川裕子、西浦梨佳子)

(アフリカ、日本、エジプト、南アフリカ共和国、ナイジェリア、カメルーン)

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