中国、レアアースの総量規制管理弁法を発表、採掘・製錬・分離を行う企業に製品流通情報のシステム入力要求

(中国)

北京発

2025年09月03日

中国の工業情報化部と国家発展改革委員会、自然資源部は8月22日、「レアアースの採掘と製錬・分離に対する総量規制管理暫定弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公布した(文書は7月28日付)。同弁法は2024年10月1日から施行された「レアアース管理条例」(2024年7月5日記事参照)などに基づいて定めたものだ(注1)。同弁法は公布日から施行し、2012年6月13日に公布した「レアアース指令性生産計画管理暫定弁法」(工信部原[2012]285号)は同時に廃止した。

同弁法では、レアアース(レアアース鉱物を含む)の採掘や、各種レアアース鉱物(採掘・輸入・その他の鉱物の加工によって得たものを指す、モナズ石精鉱を含む)の製錬・分離に対して、総量規制管理を行うとした(注2)。管理方法としては、工業情報化部が自然資源部、国家発展改革委員会と連携し、経済発展目標、レアアース資源の埋蔵量や種類、レアアース産業の発展、生態保護、市場ニーズなどに応じて、年ごとのレアアース採掘と製錬・分離の総量規制指標を策定する。同指標は国務院の承認を経て、レアアース生産企業(注3)の生産能力、技術水準、環境保護・安全水準などを総合的に考慮した上で、各生産企業に配分する(注4)。レアアース生産企業は、配分された総量規制指標の範囲内でレアアースの採掘と製錬・分離を行うとした。

また、レアアース生産企業は、月次と年次の総量規制指標の履行状況を所在地の県級政府の担当部門(工業情報化および自然資源主管部門)に報告するほか、レアアース製品フローの記録制度を整備し、毎月10日までに前月のレアアース製品の流通に関する情報を「レアアース製品トレーサビリティー情報システム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注5)に入力するよう義務付けた。

このほか、各県級以上の政府の工業情報化主管部門と自然資源主管部門は、レアアース総量規制指標の履行状況などに対する監督検査を強化し、違法行為を取り締まるとした。レアアース生産企業が同弁法の規定に違反し、行政処分を受けた場合、翌年の総量規制指標の割り当て分を削減される。

中国レアアース業界協会の陳占恒副秘書長は、同弁法によって総量規制と環境基準が強化されることにより、理論上はレアアース資源の過剰採掘による価格変動が回避されることで市場価格の安定化につながるとした。一方で、輸入鉱物を総量規制管理対象とすることは、市場の需要が急増した際に価格の持続的な上昇を引き起こし、川下企業の安定した運営に影響を及ぼす可能性があると指摘した(「界面新聞」8月26日)。

(注1)同弁法の草案は、工業情報化部が2025年2月19日から3月21日までパブリックコメントを募集し、4月14日に同部で審議・可決した。

(注2)同弁法によると、レアアースの採掘とは、バストネサイト、イオン型レアアース鉱、混合レアアース鉱など各種レアアース原鉱を採掘・選鉱し、レアアース鉱物を生成する生産プロセスを指す。また、レアアースの製錬・分離は、レアアース鉱物の加工により、各種単体または混合レアアース酸化物、塩類、その他の化合物を生成する生産プロセスを指す。

(注3)レアアースの採掘・製錬・分離を行う企業。工業情報化部と自然資源部により定められる。

(注4)工業情報化部の発表によると、2024年のレアアース採掘と製錬・分離に対する総量規制指標はそれぞれ、27万トン、25万4,000トンとなり、2回に分けて企業に配分した。

(注5)工業情報化部は2025年2月19日、同弁法の草案と同時に、「レアアース製品情報トレーサビリティー管理弁法」の草案を公開し、3月21日までパブリックコメント募集を行っていた。

(張敏)

(中国)

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