7月の米個人消費支出、小売店による販売促進セールの影響などにより強めの伸び
(米国)
ニューヨーク発
2025年09月02日
米国商務省は8月29日、7月の個人消費支出(PCE)を公表した。コア指数が引き続き小幅に上昇するなど、全体的な傾向としては物価上昇圧力が続いているものの、小売店による販売促進セールの効果もあって同月の消費は強めに推移した。
所得関連では、個人所得が名目ベースで前月比0.4%増(前月0.3%増)と市場予測と一致した。内訳では、雇用者報酬(前月比0.6%増、寄与度0.4ポイント)は前月(同0.1%増)から伸びが加速した。その他では、利息配当が前月比0.1%増、所得移転が同0.0%増だった。7月は1人当たり可処分所得も名目・実質ともに増加し、インフレ率が緩やかに上昇する中でも消費を下支えした(添付資料表1参照)。
また、個人消費支出は前月比で見た場合、名目ベースで0.5%増、実質ベースで0.3%増と強めの伸びを示した。こちらも市場予想と一致した。7月は、アマゾン・プライムデーをはじめ小売各社が販促セールを開催しており(2025年7月15日記事参照)、これが押し上げに影響した可能性がある。実質ベースの内訳では、財(前月比0.9%増、寄与度0.3ポイント)が支出全体の増加分の大半を占めた。「大きく美しい1つの法案」によってクリーンビーグル(CV)への購入補助の終了が2025年9月30日に前倒しされたこと(2025年7月15日記事参照)に伴い、自動車(4.5%増、0.16ポイント)に駆け込み需要が発生したほか、セールにあわせてコンピューターなどの情報関連機器や時計など新学期に必要な商品を購入したものとみられる。これに比して、サービス(0.1%増、寄与度0.0ポイント)の伸びは控えめだった。(添付資料表2参照)。
物価関連については、PCEデフレーターは前年同月比2.6%増(前月2.6%増)、前月比では0.2%増(前月0.3%増)で市場予想と一致した(添付資料表3参照)。変動が大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は前年同月比2.9%増(前月2.8%増)、前月比は0.3%増(前月0.3%増)だった。また、米国連邦準備制度理事会(FRB)が参照するコア指数の3カ月前比、6カ月前比は、それぞれ3.0%増(前月2.6%増)、3.0%増(前月3.1%増)だった。
物価や消費の動向はおおむね市場予測と一致しており、今回の指標に大きなサプライズはない。市場は次回の連邦公開市場委員会(FOMC)における0.25ポイントの利下げを織り込んでいるが、これが実現するかはまだ言い切れない。ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁が「私の見解では、今後のすべての会合はライブ配信だ」と述べている(ブルームバーグ8月27日)ように、9月5日に発表される雇用統計と、その翌週に発表される物価(PPIおよびCPI)次第とみられる。また、7月は販促セールの効果などもあり消費が強めの伸びを示したが、足元では労働市場が依然として減速傾向にあるデータも散見されており、雇用の減少や実質賃金の低下などが現実のものとなれば、こうした堅調さは継続しない可能性もある。
(加藤翔一)
(米国)
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