和歌山で経済安全保障セミナーが初開催、米中動向と日本企業への影響について解説
(日本)
調査部国際経済課
2025年09月12日
ジェトロ和歌山は8月29日、経済産業省、和歌山県と共催で「グローバルリスクに備える!経済安全保障と技術管理の最前線」セミナーを開催した。ジェトロ調査部アジア大洋州課から藤江秀樹課長、経済産業省経済安全保障局技術調査・流出対策室から吉富楓雅係長を講師に迎え、地域の企業関係者など約10人が参加した。
藤江課長は、世界的に地政学的、経済的な不確実性が高まっていることを指摘。最新の貿易・投資統計を基に米中間のサプライチェーン分断・再編や投資におけるデカップリングの傾向について解説した。近年の米国、中国の主要相手国・地域との貿易を指数(2018年四半期平均=100)でみると、米中間の戦略品目(注1)の貿易は2022年後半から減少傾向にあり、2024年の米国の対中貿易は100を下回る水準になっているという。
また同課長は、経済安全保障にかかる日本企業への影響やリスクとして、米中両国が矢継ぎ早に繰り出す輸出管理措置や対抗措置を挙げた。米国については輸出管理規則(EAR)(注2)、中国については反外国制裁法(2021年6月14日記事参照、注3)といった具体事例を紹介した。
吉富係長からは、技術流出対策の重要性、経路と事例や対策のベストプラクティスについて講演がなされた。特に技術流出に関しては、「昨今の急速な技術の進化に伴い、GPSのような軍事技術が民生技術に『スピンアウト』される形式ではなく、民生技術が軍事技術に転用される形が増加している」と警鐘を鳴らした。すべての優れた技術が「デュアルユース」の対象になる可能性があるとして、対策の実施を訴えた。
経済産業省では技術流出対策を講じている企業向けの認証制度を実施している。認証取得を検討している事業者に対しては、無償で専門家の派遣事業
を提供している。参加者から同認証制度の取得難易度について質問があったところ、同係長は「中堅・中小企業でも取得できるよう制度設計されている。専門家派遣事業等の支援制度を活用してほしい」と述べた。
セミナーの様子(ジェトロ撮影)
(注1)戦略品目は、IMFレポート(2024年4月)の定義に基づき、次を含む。HSコード2桁:28(無機化学品)、29(有機化学品)、30(医療用品)、38(化学工業生産品)、84(機械類)、85(電気機器)、87(輸送機器)、88(航空機・部品)、90(光学機器)、93類(武器類)の合計。
(注2)輸出管理規則(EAR)の根拠法となる、2018年に成立した輸出管理改革法(ECRA)の詳細は、ジェトロの調査レポート「続・厳格化する米国の輸出管理法令 留意点と対策」を参照。
(注3)反外国制裁法の概要についてはジェトロの調査レポート「反外国制裁法の概要」(573KB)を参照
(峯裕一朗)
(日本)
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