ボリビア大統領選、1回目投票結果の受け止めと今後の見通しを専門家に聞く

(ボリビア)

リマ発

2025年09月05日

ボリビア大統領選挙は、8月17日に実施された1回目の投票により、野党中道のキリスト教民主党(PDC)のロドリゴ・パス上院議員と野党右派の自由と民主主義同盟(LIBRE)のホルヘ・キロガ元大統領が決選投票に進むことが決まり、与党・社会主義運動党(MAS)の立候補者は敗北した(2025年8月19日記事参照)。ジェトロは9月1日、ボリビア国立サンシモン大学の元教授で地元シンクタンクの経済・社会実態研究所(CERES)で共同経営研究者を務めるロベルト・ラセルナ教授に投票結果の受け止めと、今後の見通しを聞いた。

ラセルナ氏は、現在の経済状況から生活に苦しむ多くの有権者が「MAS党以外の政党であること」を条件に投票した結果だ、と分析する。国内外の報道機関は、事前の世論調査結果などから統一同盟(UNIDAD)のサムエル・ドリア・メディナ氏とキロガ氏が決選投票に進む見通しと報じたが、実際は異なる結果になった。しかし、MAS党以外の政党を選択したという点で世論調査と一致していること、有権者は誰に投票するか直前に決めることが多いことから、事前報道との違いは驚く結果ではない、と話す。

10月19日に予定されている決選投票について見通しを立てるのは困難と言う。その理由として、両陣営が世論をみながら公約や有権者へのメッセージを直前まで修正し続ける可能性があること、多くの有権者が投票直前まで誰に投票するか決めない傾向にあることを挙げた。

パス氏はボリビアのAPEC 加盟を目指す意向を示し、キロガ氏は日本、EUなどとの自由貿易協定(FTA)の締結に取り組む方針を打ち出している。しかし、ラセルナ氏は、経済・外交分野の公約は選挙戦で大きな争点にはならないとの見方を示す。その理由として、ボリビアではインフォーマルな企業や労働者が多いことを挙げる。多くの法人や従業員が法的手続きや届け出を行っていないため、政府の公的支援を受けられない。また、密輸で稼ぐ企業はFTAによる関税率引き下げなどの恩恵を受けられないため、FTA推進の公約は一部の大企業の支持しか得られないと指摘する。政権移行後の優先課題としては、外貨規制や資源エネルギー分野の投資などの経済政策をどのように改善するかが重要だが、現在の深刻な経済状況を踏まえると、どのような対策を打っても経済回復に少なくとも3年はかかる、との見方を示した。

与党MASとエボ・モラレス元大統領については、1回目の投票結果を受け入れたことから、決選投票で妨害行為を行う可能性は低いとの見方を示した上で、次期政権発足後にどのような行動を取るか注視する必要がある、とコメントした。

写真 選挙結果の受け止めを話すロベルト・ラセルナ教授(右)(ジェトロ撮影)

選挙結果の受け止めを話すロベルト・ラセルナ教授(右)(ジェトロ撮影)

(石田達也)

(ボリビア)

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