トランプ米大統領、投資に伴う外国人材の滞在について投稿し、外国企業の不安払拭狙う
(米国、韓国)
アトランタ発
2025年09月18日
米国のドナルド・トランプ大統領は9月14日、自身のSNSで、外国企業が巨額の投資を伴って米国に進出する際に、専門知識を持つ人材を米国に一定期間連れてくることを歓迎すると投稿した。同月4日にジョージア州の現代自動車グループの拠点で実施された移民税関捜査局(ICE)などによる査察で475人が不法滞在の疑いで拘束されたこと(2025年9月8日記事参照)を受け、外国企業の対米投資に対する懸念を和らげる意図があったとの見方が報じられている(CNBC 9月16日)。
ジョージア州ブライアン郡にある現代のバッテリー工場への査察で拘束された不法滞在者のうち、300人以上が韓国人労働者とされており、米韓政府の交渉を経て(2025年9月9日記事参照)、拘束された韓国人労働者は12日に帰国した(注)。今回の取り締まりは、ジョージア州政府が同州最大の経済開発プロジェクトと呼んできた現代の電気自動車(EV)関連施設を標的としたもので、米韓両国で大きな注目を集めた。
今回、トランプ大統領は自身のSNSで「外国企業が極めて複雑な製品や機械、その他さまざまな「もの」を製造する際、巨額の投資を伴って米国に進出するならば、一定期間、専門知識を持つ人材を連れてきてほしい。これらの人材が米国から自国に戻る過程で、こうした非常に独特で複雑な製品の製造方法を米国の従業員に指導・訓練させるためだ」「私は外国企業による米国への投資を怖がらせ、意欲をそぐことはしたくない。私たちは彼らを歓迎し、彼らの従業員を歓迎する」と投稿した。投稿には現代への直接的な言及はなかったものの、移民政策と経済政策間の矛盾を調和させる難しさを示唆している(「アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション」電子版9月16日)。
今回の取り締まりで多くの労働者が拘束されたことで、現代自動車グループのホセ・ムニョス最高経営責任者(CEO)は、同バッテリー工場の稼働開始は少なくとも2~3か月ほど遅れる見込みと述べた(CNN 9月12日)。
韓国を訪問したクリストファー・ランドウ国務副長官は9月14日、韓国外務省との会合で遺憾の意を表明するとともに、トランプ氏が今回の件に強い関心を示していると述べ、韓国人労働者の貢献に見合ったビザ発給を確実にするため、米韓両政府が実務協議を加速させるよう呼びかけた(NBCニュース 9月14日)。
(注)拘束された労働者の中には、電気自動車(EV)向けバッテリー関連製造装置メーカー所属の日本人が3人含まれており、韓国人労働者とともに、全員が米国を出国済みだ。在米日系企業の間でも今回の件は注目されており、自社従業員の就労ステータスを再確認するなどの対応を取っている。
(檀野浩規)
(米国、韓国)
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