シンガポールでもアフリカビジネスについて活発な議論

(シンガポール、アフリカ、ASEAN)

ヨハネスブルク発

2025年09月02日

日本で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の翌週、シンガポールで8月26~28日に行われた第8回アフリカ・シンガポール・ビジネス・フォーラム(ASBF)でも、対アフリカビジネスについて活発な議論が行われた(2025年8月29日記事参照)。

冒頭あいさつで、シンガポールのグレース・フー持続可能性・環境相兼貿易担当相は、「過去70年間、地政学的・経済的パラダイムの支配的存在だったルールに基づく世界貿易秩序は、保護主義の台頭と経済の分断によって危機に瀕している」との危機感を示した上で、「アフリカや東南アジアのような開発途上地域にとって、これは明らかに成長を阻害する逆風であり、だからこそ、今年のASBFのテーマは重要だ」と述べ、「アフリカと東南アジアは、投資そして持続可能性を促進するために、制度的連携を強化することが必要だ」と訴えた。

また、シンガポールが自由貿易協定(FTA)を推進し、主要経済国とパートナーシップを構築しつつASEANを地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など、より広範な地域的枠組みのハブとして位置付けてきたことを引き合いに、アフリカでも東アフリカ共同体(EAC)などの地域機構に加え、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)構想が進展していることへの歓迎と期待が述べられた。そして、「アフリカと東南アジアは、経済規模が同等で、若く、急成長を遂げている地域として協力し、互いの強みを補完し合うことができる」とした。

さらに、アフリカが新たな成長段階に入るにつれ、「ビジネスチャンスはもはやアフリカ域内だけにとどまるものではない」とし、アフリカ企業がシンガポールのネットワークを活用して、ASEAN諸国やそれ以外の地域市場へのアクセスを実現している例として、南アフリカ共和国のTyme Groupを挙げた(注)。フー持続可能性・環境相兼貿易担当相は「同社はシンガポールをグローバル本社に選び、フィリピンへの進出も成功させた。このような成功事例がさらに増え、地域間の架け橋が強化されることを期待している」と述べた。

その後、アフリカの都市問題への対応や、拡大する消費者市場、エネルギー転換に関するパネルディスカッションが行われた。いずれのセッションでも、アフリカ側の意見やニーズを聞きながら、パートナーシップを組んで取り組むことの重要性が指摘され、この分野で活躍するアフリカ、シンガポール双方企業の取り組みが紹介され、活発な議論が行われた。

写真 ASBFパネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

ASBFパネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(注)同社は、ジェトロが主催した「TICAD Business Expo & Conference」に参加し、プレゼンテーションを行った。

(的場真太郎)

(シンガポール、アフリカ、ASEAN)

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