パキスタン、史上最悪レベルの大雨被害

(パキスタン)

カラチ発

2022年08月30日

パキスタンでは、史上最悪レベルの大雨災害に見舞われている。20227月の全国の平均降雨量は177.5ミリと平年の2.8倍になり、1961年以降で最多となった。国家災害管理庁(NDMA)は829日、6月以降のモンスーン降雨による死者数が子供386人を含む1,136人に達したと発表した。

洪水被害は、西部バロチスタン州、インダス川が通るシンド州北中部およびパンジャブ州南部などで大きくなっている。住宅被害は、全半壊家屋が105万軒、その被災者は3,300万人を超えた。中でも、シンド州は1,450万人で最も深刻な影響を受けている。家畜の亡失も全国で70万頭に上っている。インフラへの被害も大きく、延べ3,400キロ以上の道路が寸断され、橋も162カ所が崩落、各地で移動や物流に影響が出ている。シェリー・レーマン気候変動相は「今年は前例のないモンスーンで、9月も続くかもしれない」と今後の被害の拡大も示唆した(「ドーン」紙826日)。

政府は825日、洪水被害を受け、国家非常事態宣言を発令。軍も被災者の救出や災害物資の配給に出動した。シャバズ・シャリフ首相は同日、国際機関、国際金融機関などとの緊急会合を開催し、援助を要請。各機関から5億ドルに上る援助の申し出がなされたという(BR紙ほか826日)。

川沿いの農村部で被害が大きいことから、農業への影響も大きい。主要作物の1つである綿花は2022/2023年度(20227月~20236月)の作付面積が200万ヘクタールで前年度比6.9%の増加となったが、前例のない大雨による収量の減少が懸念されている(財務省「月例経済報告20227月」)。

インフレの高進も深刻だ。202111月から2桁台のインフレ率が続く中、7月消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比24.9%と2カ月連続で20%を超えた。その中でも食料品の値上がり著しく、今後、耕作地の被害や物流の混乱で生鮮品を中心に、さらに食料品が値上がりするとみられる。

日系企業が集中するカラチでは、6月以降56回の強い降雨があり、街のいたるところで冠水し、市民生活に大きな影響が生じたものの、日系企業の大きな被害は報告されていない。

写真 洪水被害を受けた農村と家(ジェトロ撮影)

洪水被害を受けた農村と家(ジェトロ撮影)

(山口和紀)

(パキスタン)

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