東南アジア最大級の風力発電所「モンスーン」、商業発電を開始
(ラオス)
ビエンチャン発
2025年09月04日
東南アジア最大級でラオス初となる陸上風力発電所「モンスーン陸上風力発電」が8月22日、商業運転を開始した。全容量がラオスからベトナム電力公社(EVN)向けだ。
このプロジェクトは2023年4月に正式着工し(2023年5月16日記事参照)、ラオス南部のセコン県ダクチュン郡とアタプー県サンサイ郡の標高1,100~1,700メートルの山岳地帯に建設された。4.5メガワット(MW)の風力発電機133基を備え、総出力は600MWに上る。当初は2025年12月に全面稼働を計画していたが、7月に66基(300MW)の試験運転を開始し、133基の全てがこのほど稼働したことで、当初計画よりも4カ月前倒しでの商業運転開始となった。
同発電所で発電される電力は全て、27キロに及ぶ500キロボルト(kV)送電線でラオス・ベトナム国境に送電される。その後、ベトナム側で44キロの送電網に接続し、タンミー変電所に送られる。このプロジェクトは、ASEANパワーグリッド構想(注)に沿ったモデルケースと位置付けられている。
同発電所の環境社会モニタリングレポートとプレスリリースによると、プロジェクトには大きな効果が期待されており、EVNへの25年間の売電期間を通じて、累計約3,250万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減が見込まれている。この削減量は、自動車約700万台が1年間走行を停止した場合、あるいは約5,900万本の植林(25年分)をした場合に相当する。
プロジェクトでは住民の移転は発生しておらず、コミュニティー開発基金として年間110万ドルが拠出される予定だ。同基金は教育や医療、農業、インフラ整備などの分野の地域支援を目的とし、初期段階では留学奨学金制度、移動診療サービス、コーヒー栽培による生計支援プログラムなどを実施している。
また、ラオスの風力発電分野では、北部でCGNパワー(中国広核集団)よる556MW規模の開発計画が進行中で、中部ボリカムサイ県でラオ・ベト・エナジーによる750MW規模のプロジェクトが計画されている。
(注)ASEANパワーグリッド構想(APG)とは、ASEAN域内で電力を相互融通し、再生可能エネルギーを広域で活用する取り組みのこと(2024年8月9日記事参照)。
(山田健一郎)
(ラオス)
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