ラオスで東南アジア最大級の陸上風力発電の建設が開始

(ラオス、ベトナム)

ビエンチャン発

2023年05月16日

東南アジア最大級となる600メガワット(MW)の陸上風力発電所「モンスーン陸上風力発電」事業の起工式が4月26日、ラオスの首都ビエンチャンで開催された。同事業は、インパクト・エナジー・アジア・デベロップメント(IEAD、注1)が85%以上、ラオスの民間企業SMEコンサルテーションが15%以下を出資してラオスに設立した、モンスーンウィンドパワーが25年間の開発権を得て実施する(注2)。133基の風力発電機の建設やベトナム国境まで22キロの送電線建設を行い、建設費の総額は約9億ドルにのぼる。2025年12月から商業発電を開始し、ベトナム電力総公社(EVN)へ売電を行う計画だ。なお、ベトナム政府は、ラオスの風力発電所で発電した電力の買い取り価格の上限を6.95セント/キロワット時(kWh)と規定しており、ベトナム国内の風力発電による電力買い取り価格の上限8.5セント/kWhよりも安く設定されている。

アジア開発銀行(ADB)によると、同事業により、二酸化炭素(CO2)換算で年間約75万トンの温室効果ガスが削減されるという。なお、環境社会影響調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、プロジェクトサイトはベトナム国境に近いセコン県ダクチュン郡からアタプー県サーンサイ郡にかけての約7万ヘクタールで、23村が農地の接収などの影響を受けるとされる。

同事業へのファイナンスでは、ADBが再生可能エネルギー分野でASEAN最大規模となる6億9,255万ドルの協調融資をアレンジした。内訳には、ADBの直接融資1億5,000万ドルに加え、タイや日本の民間金融機関からの融資を原資としてADBが契約上の貸し手となる融資1億5,000万ドルや、開発金融機関による協調融資(パラレルローン)などが含まれる。さらに融資とは別に、技術協力(グラント)1,000万ドルなども供与されている。

ラオスでは、同事業のほかにも、ベトナム企業による252MW、ラオス企業による1,200MWの風力発電事業の可能性調査がそれぞれ実施されている。なお、世界銀行によれば、ラオスでは風力エネルギーの潜在開発能力(風速8メートル/秒以上)は約2,800MWと推定されている。

写真 ダクチュン郡の民家(ジェトロ撮影)

ダクチュン郡の民家(ジェトロ撮影)

(注1)三菱商事やタイのインパクト・エレクトロンズ・サイアム(Impact Electrons Siam)、BCPGなどが出資して香港に設立した会社。

(注2)資本関係については同事業のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照のこと。

(山田健一郎)

(ラオス、ベトナム)

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