EPAセミナーを開催、HSコードや書類作成、検認などを解説

(日本、世界)

調査部米州課

2025年09月30日

ジェトロは91718日の2日間、ウェビナー「EPAの『気になる』を解消!制度理解と実務対応力を磨く2日間」を開催した。経済連携協定(EPA)利用の手続きを担う実務者を対象に、企業がつまずきやすいポイントについて解説した。

1日目は、輸出製品の品目分類(HSコード)の特定について解説した。財務省関税局経済連携室の伊佐友希課長補佐は、さまざまな協定で事前教示制度(注1)の導入が義務付けられており、HSコードを判断する相手国税関に対して輸出前に情報照会ができることや、EPAに関する疑問を相談できるEPA関税認定アドバイザー制度(注2)について紹介した。東京税関分類センターの山下清喜関税鑑査官は、品目分類の原則である「関税率表の解釈に関する通則」のうち、通則1の具体的な内容について解説した。中でも、機械の部分品について、関税率表の規定に基づいたHSコード決定までの流れを事例に沿って説明した。ジェトロ貿易投資相談課の中村貴彦アドバイザーは、企業からよく寄せられる質問を紹介し、セット品のEPA適用における注意点(注3)などを取り上げた。

写真 1日目の様子(ジェトロ撮影)

1日目の様子(ジェトロ撮影)

2日目は、経済産業省原産地証明室の中本亮介室長が、原産地証明書(第三者証明制度)における保存書類と検認について解説した。検認については、必要な書類を保存するなど適切な準備を行うことが重要で、過度に警戒する必要はないと強調した。また、よく指摘を受けるポイントとして、原産地証明書の記載上の誤りがあり、発給申請の際には正確に入力することが検認リスクを低減させることにつながるとした。アイシンで長年EPA活用に携わっている清水一氏からは、EPA利用による「企業競争力向上」の事例とともに、同社でのEPA導入時に直面した課題を紹介した。EPA利用を自社やサプライチェーン全体の利益に結び付けるためには、まず経営層の理解を得た上で、組織的に手続きの標準化や効率化を進める必要があると述べた。

写真 2日目の様子(ジェトロ撮影)

2日目の様子(ジェトロ撮影)

ウェビナーには2日間合わせて約2,000人が参加し、100件を超える質問が寄せられ、関心の高さがうかがえた。

同ウェビナーは2025年12月25日までアーカイブで配信している。

(注1)輸入国税関に対して、品目分類、原産地規則、関税評価などについて問い合わせを行うことができる制度。協定によっては回答項目や回答期限、有効期間が定められている。

(注2)全国の通関士を対象にEPAの利用に必要な知識を身に付ける講座を実施し、合格者を認定する制度。一般社団法人日本通関業連合会が実施している。詳しくはこちら外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注3)異なるHSコードに対応する複数の品目で構成されたセット品にEPAを適用する場合、セット品に関する規定が存在する協定においては、当該規定に基づく基準に従って原産性を確認する必要がある。一方、セット品に関する規定が存在しない場合には、セットを構成する品目ごとに原産地規則を満たしているかを個別に確認する必要がある。したがって、セット品全体のHSコードに基づいて原産地規則が判断される場合と、セットを構成する全ての品目がそれぞれ原産地規則を満たす必要がある場合がある。

(加藤遥平)

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