ブラジルの8月の物価、1年ぶりのマイナス、電気料金の一時的引き下げが影響
(ブラジル)
サンパウロ発
2025年09月17日
ブラジル地理統計院(IBGE)は9月10日、同国の代表的な物価指数の拡大消費者物価指数(IPCA)について、8月の上昇率を前月比マイナス0.11%と発表した(添付資料表参照)。2024年8月以来、1年ぶりのマイナスとなった。1~8月累計では3.15%、直近12カ月の上昇率は5.13%だった。中央銀行が設定する2025年のインフレ目標値(目標値3.0%、上限4.5%)を11カ月連続で上回った。
費目別では、9項目中5項目がマイナスとなった。住居関連は0.90%減(寄与度マイナス0.14ポイント)、飲食料品は0.46%減(寄与度マイナス0.10ポイント)、交通・運輸は0.27%減(寄与度マイナス0.06ポイント)、家庭用品と通信はともに0.09%減(寄与度0ポイント)だった。住居関連では、電気料金が4.21%と大きく下落し、押し下げ要因となった。
IBGEによると、8月には電気代の追加料金(注1)が増額されたものの、「イタイプボーナス」(注2)の配分により、結果的に電気料金が一時的に引き下げられた。なお、IBGEのフェルナンド・ゴンサルベス物価指数アナリストは現地紙「フォーリャ」(9月10日付)のインタビューで、飲食料品についてはトマト、ジャガイモ、タマネギなどの豊作が価格下落の要因と述べた。交通・運輸については、学校の休暇(注3)の終了に伴って航空券価格が下落したほか、8月以降、国内で販売されるガソリンへのエタノール混合率が30%へ引き上げられたことによる燃料価格の下落が部分的に反映された(2025年6月30日記事参照)と説明した。
(注1)ブラジルでは、電気代の追加料金は水力発電所のダム貯水量や火力発電所の稼働率を基に算定される。追加料金は「緑」「黄色」「赤1」「赤2」の4段階の色で示される。「緑」の場合には追加料金はないが、「黄色」は100キロワット時(kWh)当たり1.89レアル(約53円、1レアル=約28円)、「赤1」は同4.46レアル、「赤2」は7.88レアルが追加で徴収される。7月に「赤1」だった電気料金は8月には「赤2」に設定された。
(注2)イタイプボーナスとは、イタイプ共同水力発電所におけるブラジル側の電力販売によって得られた前年度の収益残高を基に毎年、ブラジル国内の消費者に対して電気料金の割引というかたちで還元されるもの。2024年の収益に基づくボーナスは8月の電気料金に反映された。
(注3)ブラジルでは、学校の休暇は通常7月に設定されている。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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