ブラジル、バイオ燃料混合率を拡大、エタノールは30%へ
(ブラジル)
サンパウロ発
2025年06月30日
ブラジル政府の国家エネルギー政策評議会(CNPE)は6月25日、国内で販売されるガソリン(タイプC、注1)への無水エタノール混合率を現行の27%から30%(E30)へ、ディーゼル燃料へのバイオディーゼル混合率を現行の14%から15%(B15)へ、それぞれ引き上げることを承認した。この新規定は8月1日から施行される。
アレシャンドレ・シルベイラ鉱山エネルギー相は、今回の決定はエネルギー主権の確立を目的としているとし、「この歴史的な行動により、われわれは15年ぶりにガソリンを自給自足することができるようになる」と述べ、年間約7億リットルの輸出余剰が生まれるとの見通しを示した。
また、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、2025年11月にブラジルで開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を前に、「このバイオ燃料政策は、他国が決して競争できないモデルだ」と語り、環境政策でのブラジルのリーダーシップを強調した。今回の混合率の引き上げは、2024年10月にルーラ大統領が署名した「未来の燃料法」によって可能となった(2024年10月16日記事参照)。同法は、車両の技術的な実現可能性が確認されれば、政府がガソリンへのエタノール混合率を最大35%まで引き上げることを認めている。
鉱山エネルギー省の発表によると、E30への移行により、100億レアル(約2,600億円、1レアル=約26円)以上の投資と、5万人以上の雇用創出が見込まれている。ガソリンの小売価格は1リットル当たり最大0.2レアル低下する可能性があり、シルベイラ鉱山エネルギー相はインフレ対策への貢献にも期待を示した。環境面では、年間約300万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減が期待される。また、B15の導入は、特に排出ガス削減が困難な大型輸送部門の脱炭素化を促進し、「社会バイオ燃料認証プログラム」(注2)を通じて、5,000世帯以上の小規模農家の所得向上にも貢献する。
サトウキビ・バイオエネルギー産業協会(UNICA)のエバンドロ・グッシ会長は今回の決定について、「技術的、制度的、政治的な努力の末に勝ち取った歴史的な成果」として歓迎している。この決定は鉱山エネルギー省が主導し、マウア工科大学が実施した技術テストに基づいている。6月25日付「フォーリャ」紙によると、このテストには16台の乗用車と13台のオートバイが使用され、一部の車両(モデルは非公表)では燃料使用による性能差がみられたが、「重要ではない」と判断され、新混合燃料が車両性能に悪影響を与えないことが確認された。
(注1)製油所から出荷される純粋なガソリン(タイプA)に、政府が定める比率で無水エタノールを混合した燃料。ブラジル国内のガソリンスタンドで一般的に販売されている。
(注2)バイオディーゼルの生産チェーンに家族農業の参加を保証し、その社会的な包摂を促進するための政府認証制度。この認証を取得したバイオディーゼル生産者は、家族農業従事者から規定の原料を調達し、無償の技術支援を提供することなどを条件に、税制上の優遇措置や商業上の利点(公的入札での優先権など)が付与される。この制度は、2004年の政令によって創設され、現在は2020年10月22日の政令第10,527号とその後の改正によって規定されている。
(中山貴弘)
(ブラジル)
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