プーチン大統領が訪中、ガス供給拡大で合意

(ロシア、中国、モンゴル)

調査部欧州課

2025年09月08日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月31日から9月3日にかけて中国を訪問し、上海協力機構(SCO)の首脳会議(2025年9月3日記事参照)や、第7回となる中国、モンゴル、ロシアの3者首脳会談、中ロ首脳会談、その他の2国間会談に出席した。

9月2日のロシア、中国、モンゴル首脳会談の結果、ロシアから中国に延びる計画のガスパイプライン「シベリアの力2」と、モンゴルを通過する部分の「ソユーズ・ボストーク」の建設に関する法的拘束力のある覚書が締結された。同パイプラインのガス輸送能力は年間500億立方メートル(「インターファクス通信」9月2日)。同プロジェクトに関して、ロシアのセルゲイ・ツィビレフ・エネルギー相はウラジオストクで開催された東方経済フォーラムの会場で記者団に対し、現在は予備的な技術・経済評価の段階にあり、開始時期や財政面の詳細は評価の完了後に発表される予定と説明した(「タス通信」9月4日)。一方、カーネギー・ロシアユーラシア・センターのディレクターのアレクサンドル・ガブエフ氏は英紙「フィナンシャル・タイムズ」に対し、「価格や実施時期が定められていない以上、法的拘束力のある覚書でも最終合意とはいえない」との見解を示す(「モスクワ・タイムズ」9月3日)など、覚書の実効性には懐疑的な見方もある。

「シベリアの力2」を通じた中国向けガス供給計画とは別に、ロシア国営ガス最大手ガスプロムのアレクセイ・ミレル会長は、中国石油天然気集団(CNPC)との間で、天然ガス供給に関する商業的合意が締結されたことを明らかにした。この合意により、既に開通しているガスパイプライン「シベリアの力」を通じた中国への供給量は、年間380億立方メートルから440億立方メートルに増加する。また、「極東ルート」と呼ばれるサハリンからのガスパイプラインを通じた供給量も、年間100億立方メートルから120億立方メートルに拡大される予定だ(「インターファクス通信」9月2日)。

中国、ロシア人のビザなし入国導入、プーチン大統領もすぐに反応

9月2日に行われた中ロ首脳会談の結果としては、エネルギー、宇宙開発、人工知能(AI)、農業、医療、教育、メディアなど、幅広い分野にわたる22件の協力文書が署名された。また、中国当局はロシア国民に対し、観光、商用、私的訪問、乗り継ぎを目的とする場合に限り、最大30日間のビザなしでの滞在を認める制度を導入する。この制度は9月15日から2026年9月14日までの1年間、試験的に実施する。これを受けて、プーチン大統領は東方経済フォーラムの会合の場で、この決定はわれわれにとって予想外だと述べ、ロシアも中国の旅行者に対して同様のビザ免除制度を導入する用意があると表明した。

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