上海協力機構の首脳会議、多国間貿易体制を支持

(中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシ)

北京発

2025年09月03日

上海協力機構(SCO)の第25回首脳会議が8月31日~9月1日、中国天津市で開催され、多国間貿易体制を支持するとした「天津宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。首脳会議には、今回の会議を主宰した中国の習近平国家主席のほか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相らが参加した(注1)。

「天津宣言」では、SCO加盟国の経済連携の強化や、安全保障での協力、人的交流の推進など、多方面に及ぶ合意を示した。宣言は冒頭で、地政学的対立は激化の一途をたどり、世界やSCO地域の安全と安定に脅威と挑戦をもたらし、世界経済、特に国際貿易と金融市場は深刻な打撃を受けていると指摘した。その上で、多国間主義の強化・連携として、環境・エネルギー、デジタル経済、科学技術イノベーション、高等教育や職業技術教育、文化交流などの分野で協力体制を強化するとした(注2)。また、SCO加盟国は、加盟国間の関係を発展させるため、国連憲章とSCO憲章の目的と原則、その他、広く認められた国際法の原則と規範を平等かつ全面的に順守することを再確認した。さらに、SCO加盟国は各国国民が自らの政治的・経済的・社会的発展の道筋を選択する権利を尊重すると主張し、主権・独立・領土保全の相互尊重、平等・互恵、内政不干渉、武力による威嚇を行わないという原則が国際関係の安定的な発展の基礎だと強調した。

習国家主席は9月1日の首脳会議で、SCOには既に26カ国(注3)が参加し、50以上の分野で協力を展開し、経済規模が30兆ドルに迫る世界最大の地域組織に成長し、国際的な影響力が日々高まっていると強調した。さらに、SCOの改革を継続し、安全保障上の脅威と課題に対応する総合センターと麻薬取締センターを早期に稼働させ、上海協力機構開発銀行の設立を進め、加盟国の安全保障と経済協力に対してより強力な支援を提供していくと述べた。

また、習国家主席は首脳会議参加のため訪中した各国首脳と個別に会談を行った。9月2日には北京市でプーチン大統領と会談し、習氏は、中ロ関係は国際情勢の変動に耐え、永続的善隣関係、包括的で戦略的なパートナーシップ関係、互恵的協力とウィンウィンの大国関係の模範を示していると述べた。また、中国側はロシア側と緊密なハイレベル交流を維持し、互いの発展を支援し、両国の核心的利益と重大事項に関わる問題で協調し、中ロ関係の一層の発展を推進していくことを希望すると表明した。なお、中国外交部の発表によると、中ロ両国は国連、SCO、BRICS、G20などの多国間プラットフォームで協力を強化し、「人類運命共同体」の建設をともに推進していくと強調したとされた。

(注1)SCOの発表によると、今回の首脳会議には習国家主席、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、インドのモディ首相、イランのマースード・ペゼシュキヤーン大統領、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領、キルギスのサディル・ジャパロフ大統領、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相、ロシアのプーチン大統領、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領、ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領が出席した(SCO発表順)。次回の議長国はキルギスが務め、スローガンを「SCO設立25周年、持続可能な平和と発展、繁栄に向けて手を取り合う」とした。

(注2)中国外交部は、中国がSCO議長国を務めた期間(2024年7月4日~2025年9月1日)内に、187回の会議やイベントを開催し、90件の文書を発表し、36の提案を行い、計313項目の活動を行ったと報告している。

(注3)SCOは2001年に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンによって設立された。その後、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシが加盟した。オブザーバー国としてアフガニスタンとモンゴル、パートナー国としてアゼルバイジャン、アラブ首長国連邦(UAE)、アルメニア、エジプト、カタール、カンボジア、クウェート、サウジアラビア、スリランカ、トルコ、ネパール、バーレーン、ミャンマー、モルディブがいる(2024年7月11日記事参照)。

(亀山達也)

(中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシ)

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