米国立標準技術研究所、助成対象の先端半導体やAI、量子技術などの研究開発プロジェクトを公募
(米国)
ニューヨーク発
2025年09月30日
米国の国立標準技術研究所(NIST)は9月24日、米国のマイクロエレクトロニクス技術を前進させる先端半導体や人工知能(AI)、量子技術などの研究開発プロジェクトを公募すると発表した。申請はNISTのCHIPS研究開発局(注1)により随時審査され、助成の対象となる。トランプ政権2期目発足以降、NISTによる半導体研究開発などに対する助成の公募は初めてとみられる。
今回の公募で特に重視されるのは、2025年9月に発表されたNISTの「21世紀における米国技術主導戦略」に沿う、次の6つの分野となっている。
- 先端半導体技術の研究・試作、米国内半導体人材育成
- 人工知能(AI)の先進マイクロエレクトロニクス研究開発への応用
- 量子技術の先進マイクロエレクトロニクス研究開発への応用
- バイオテクノロジー・バイオ製造技術の先進マイクロエレクトロニクス研究開発への応用
- イノベーションの商業化
- 標準化開発
これらの分野において、(1)国家安全保障・経済安全保障、(2)技術的・科学的優位性、(3)実現可能性、(4)商業化可能性、(5)財務的実行力などの観点から審査する。
申請できるのは、米国内の営利・非営利組織などに限定される。個人および法人格を有しない組織は申請できない。米国外のパートナーへの2次委託は可能だが、外国の敵対勢力への委託は禁止される。採択件数は申請数などによって変わり、申請するプロジェクトの予算規模は、最低で1,000万ドルとされている。申請は連邦政府のポータルサイト(2025-NIST-CHIPS-CRDO-01)から可能で、2029年9月30日まで受け付ける。
バイデン前政権は、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に基づいて半導体関連企業に助成することで、米国内の生産・研究開発拠点の拡大を図ってきたが(2025年1月20日記事参照)、ドナルド・トランプ大統領は政府支出が拡大する助成を嫌い、代わりに関税措置を用いて対米投資を拡大する意思を示してきた(2025年4月15日記事参照)。そのため、政権発足以降、半導体関連の助成金を拠出する発表はほとんどみられなかった。今後もCHIPSプラス法にのっとり、トランプ政権下でも半導体分野への助成が進むのか、今後の動向が注目される。
なお、トランプ政権は、CHIPSプログラム局(注2)の責任者に投資銀行出身のビル・フラウエンホーファー氏を起用し、国立半導体技術センター(NSTC)の運営責任を移管するなど(2025年8月26日記事参照)、バイデン前政権からの方針転換を図っている。
(注1)CHIPS R&D Office。NISTに属し、半導体の研究開発や技術革新を担う。
(注2)CHIPS Program Office。NISTに属し、半導体関連政策や補助金などを担う。
(赤平大寿)
(米国)
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