米商務省、国立半導体技術センター(NSTC)の運営を国立標準技術研究所(NIST)へ移管

(米国)

ニューヨーク発

2025年08月26日

米国商務省のハワード・ラトニック長官は8月25日、国立半導体技術センター(NSTC)の運営責任をこれまでの全米先端半導体技術センター(Natcast)から、商務省の国立標準技術研究所(NIST)へ直ちに移管すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。Natcastは、バイデン前政権がNSTCの運営のために設立した民間の非営利法人だが、商務省はこのたび、Natcastは違法に設立されたものと判断した。

2022年8月に成立したCHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)は、商務省に対して、NSTCを設立し、先進半導体技術の研究開発、米国内の人材育成、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化などを行うよう定めた(2023年5月9日記事参照)。だが、今回の発表によると、バイデン前政権は商務省内にNSTCを設立する代わりにNatcastを設立し、Natcastの幹部の過半数に商務省の元高官などを起用した。その後、Natcast理事会に対し、法的・法人運営上の指針を提供し、Natcastはこれを採用した。商務省は、こうした事実関係が政府の代理として行動する機関の設立を禁じる政府法人管理法に違反したと判断した。その上で、トランプ政権発足直前の2025年1月16日に合意された、Nactcastが今後10年間、NSTCの運営責任を負うことや、連邦政府の資金を最大74億ドル提供することは無効だとした。

なお、Natcastは商務省とともに、2024年10月から2025年1月にかけて、NSTCの旗艦研究開発施設として、(1)極端紫外線(EUV)の研究開発施設をニューヨーク州に、(2)半導体設計の研究開発施設をカリフォルニア州に、(3)先端パッケージング試験施設(PPF)をアリゾナ州に、それぞれ設置すると発表していた(2025年1月7日記事参照)。これら施設の今後の具体的な運営方針については、今回の発表では触れていない。

商務省は6月にも、バイデン前政権が設置した米国人工知能(AI)安全研究所を、AI標準化・イノベーションセンター(CAISI)に改組すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますするなど、バイデン前政権からの方針転換を進めている。

(赤平大寿)

(米国)

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