2025年の世界経済は予想より強いも、関税と不確実性により鈍化へ、OECD見通し
(世界)
調査部国際経済課
2025年09月29日
OECDは9月23日、最新の「世界経済見通し」を発表し、世界経済の成長率(実質GDP伸び率)について、2025年を3.2%、2026年を2.9%と予測した。前回(2025年6月)予測から、2025年は0.3ポイントの上方修正、2026年は据え置いた(添付資料表参照)。米国の追加関税に備えた企業による生産や貿易の前倒しのほか、米国での人工知能(AI)関連の活発な投資や、中国における政府の財政支援などに下支えされ、2025年上半期の世界経済は予想よりも強靭(きょうじん)だったとした。他方、関税に備えて積み増した在庫は減少してきており、追加関税の適用や政策的な不確実性が企業の投資と貿易を圧迫するとし、2024年の3.3%から成長が鈍化する見通しを示した。
主要国・地域別では、米国は、2025年に1.8%、2026年に1.5%と、それぞれ前回見通しから0.2ポイントの上方修正、据え置きとなった。ハイテク分野の投資の伸びを追加関税と純移民数(注)の減少が相殺し、2024年の2.8%から減速する見通しとした。OECDは、8月末時点の米国の実行関税率を1933年以来最高となる19.5%と推定している。追加関税による経済への影響については、企業による在庫の利用やコスト吸収により完全には表れていないとしつつ、関税の対象となっている製品の購入減や消費者価格への転嫁などの兆候があるとした。
中国は、2025年に4.9%、2026年に4.4%と、前回見通しからそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイントの上方修正となった。米国向けの前倒し輸出からの反動、米国からの輸入に対する報復関税、財政支援の減少により、2025年下半期から成長が鈍化するとした。
インドに関しては、米国による追加関税が輸出部門を押し下げるものの、物品・サービス税(GST)改革(2025年9月25日記事参照)を含む財政・金融政策の緩和により経済全体の活動が下支えされるとした。
G20加盟国のインフレ率は、経済成長の鈍化と労働市場の緩和に伴い低下する見通しで、2025年に3.4%、2026年に2.9%とした。ただし、一部の国でインフレ率低下のペースが弱まっていることを踏まえ、インフレ圧力が再び高まるリスクも指摘している。
OECDは中央銀行に対し、経済や金融市場のリスクバランスの変化を注視し警戒を続けるべきとした。さらに、中央銀行の独立性を維持することが、政策の信頼性の確保と、ボラティリティやインフレの持続性の軽減につながると続けた。
今回の予測は、8月末時点で米国が導入した関税率が2026年まで継続することを前提としている。
(注)純移民とは、年間の当該国への移民流入から外国への移民流出を差し引いたもの。
(山田恭之)
(世界)
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